医師?東京で働く?キャリアを考える機会が充実
――仙台二高は、今年度の進学実績が好調ですね。東大の合格者数が12人、東北大が78人でした。
伊藤寛明・教頭(以降、役職略) 本校はもともと県内有数の男子校でしたが、2007年から共学となり全県一学区制になりました。その結果、全県から男女の優秀な生徒が集まり、学力層が底上げされたという背景があります。その生徒たちが目的意識を持って学業はもちろん、クラブ活動や行事にも意欲的に取り組んでいますし、私たちも高いレベルの授業をするよう努めています。

仙台第二高校 教頭
――例年、医学部進学においても高い実績を出しています。
木村剛・進路指導部長 今年、国公立大・医学部医学科の現役合格者数は30人、浪人を含めると48人でした。これは、過去最高の数字。本校はもともと医学部志望者が多く、医師を志す生徒を対象とした、進学後の医師としてのキャリアプランニングのため、医進会という組織を設けて活動しています。
例えば、総合病院の体験会や医師の講演を聞くだけでなく、医療について調べたことや収集した医療記事を発表する機会を設けています。1年次から参加でき、各学年40~50人で活動しています。

医進会は学力向上を目指す場ではなく、医師や医療についての理解を深める場です。中には活動を通して「自分は医師には向いていないかも」と別の進路を目指す生徒もいます。それはそれで、自分と真摯に向き合った結果なのでいいことだと捉えています。
――入試に向けてのサポートはどのように行っていますか。
木村 最難関大は、2年生の終わりぐらいに志望する生徒を集めてガイダンスを行います。同じ志を持った仲間で集まることで、お互いが刺激を受ける場となっていますね。

仙台第二高校 進路指導部長
さらに授業の中でも教員が「こういう学習をすればいいよ」「ここはよく取り上げられる分野だよ」など声掛けをして、生徒の自立を促しています。推薦入試を希望する生徒には、進路指導部が過去のデータを示しながら話したり、複数の先生が志願理由書のチェックや面接指導を行ったりしています。
――キャリア教育も力を入れていると聞きました。
小山裕之・主幹教諭 東京の大学やその先を体験する将来を見据えた催しとして「未来キャリア創造プロジェクト」を実施しており、1年生の夏休みに希望者が東京で1泊2日の研修を行っています。

企業や研究室、大学を訪問したり、社会の第一線で活躍している卒業生などを講師にグループセッションしたり、東大の現役学生であるOB・OGを訪問したりしています。
1学年320人ですが、280人ほどの生徒が参加する大きな行事の1つになっています。キャリアを積んできた社会人から話を聞くことで視野を広げ、自分の将来について考えてもらうことが目的。ここ10年、首都圏の進学者数が増えていますが、この行事がきっかけになっていると思います。
高校のレベルから一歩先へ、学問への探究心を引き出す
――授業の特徴は?
小林雄介・生徒指導部長 私は社会の公民・政治経済を担当していますが、教科書に載っていることが現代社会といかにつながっているのか、ニュースなどを取り上げるようにしています。高校の範囲だけでなく、大学での学びを伝えることで、学問への意欲や興味も湧いてくるのではと思っています。

仙台第二高校 生徒指導部長
木村 数学科は、ほとんどの生徒が予習して来ており、授業は復習の場として理解を深めています。教科書レベルの問題だけでなく、時には大学入試レベルの難しい問題も投げかけています。
その際、生徒に話し合いをさせて解法を導かせています。かなり難しい問題にも、生徒たちはよく食らいついてきますね。
早坂重行・校長 本校はもともと生徒同士で教え合う文化があります。

仙台第二高校 校長
1967年生まれ。東北大学大学院教育情報学教育部博士後期課程修了。博士(教育情報学 )。宮城県仙台第二高等学校、岐阜県立多治見北高等学校(人事交流)などで、国語教諭 として勤務。宮城県教育庁教職員課管理主事を経て、蔵王高校、宮城野高校で校長を歴任。宮城県高等学校文化連盟会長、宮城県高等学校体育連盟副会長も務めた。校長の業務に努めながら、学術研究も継続しておこなっている。2025年より現職
国公立大の二次試験対策においては、生徒同士で問題を解き合っている姿がよく見られます。教員は必要以上に教え込むのではなく、高いレベルで学び合う生徒を評価して、モチベーションを上げる役割を果たすことで自主的に学ぶ生徒を育てていると思います。良質な教師陣が生徒の学びの自立化を支えています。
――探究活動はどのように展開していますか。
小山 私は探究活動のグランドデザインに関わっています。ベースは生徒が将来、社会にどう関わり、貢献するのかを考えてもらうこと。
1年次は視野を広げることを目的に、興味のある分野の新書を読み、同じテーマの生徒がグループになって、共同で探究活動を行います。
2年次には、個別で自身のテーマを深めて行きます。探究活動の成果が京都大学医学部の特色入試の合格につながった生徒もいます。
多国籍の留学生と世界の課題についてセッション
――グローバル教育はどのようなことを実施していますか。
小山 2年生を対象に、「北陵グローバルゼミ」を催しています。本校320人の生徒に対して留学生を50人ほど招聘し、少人数のグループに分かれてセッションを行います。留学生は東大や早稲田大、慶應大などの大学生・大学院生で、パキスタン、エジプト、コスタリカなどいろいろな国の学生に参加してもらっています。

仙台第二高校 主幹教諭
テーマはジェンダーなど社会課題を取り上げます。すべて英語で行いますが、英語力は副次的なもので、宗教や価値観の違う留学生と語り合うことで世界を垣間見ることを目的にしています。生徒のへのアンケートでは「世界のことをもっと知りたくなった」と回答した人が97%、「将来の夢や目標を持つための参考になった」が89%など、好評です。
小林 十数年以上前から2年生の希望者を対象に、夏休みに10日間のアメリカ研修を行っています。現地の大学生やハーバード大学、マサチューセッツ工科大学で学ぶ日本の学生と交流します。世界のトップの大学生が何を考え、どう過ごしているのか、生徒は大きな影響を受けています。
――校是に「文武一道(両道)」を掲げ、クラブ活動もさかんのようですね。
早坂 入学直後から新入生は、杜の都(宮城県仙台市の愛称)の早慶戦と言われる、仙台一高との硬式野球の定期戦に向けて応援練習を行います。勝っても負けても、生徒一丸となって応援したことが、二高生になったという帰属意識を高めるようです。

クラブ活動も今年のインターハイ予選では各部とも健闘し、中でもフェンシングや卓球、弓道、陸上などがインターハイ出場を果たしています。文化部でも、囲碁部が全国大会3連覇を果たしたほか、囲碁、将棋、化学、放送、かるたが全国高等学校総合文化祭に出場しています。勉強だけでなく、クラブ活動でも着実な成果を上げていることは、県全体の高校生の学びにもよい影響を及ぼしているのではないでしょうか。
――今後の目標と、改めて仙台二高の特色は。
早坂 これまで先生方の尽力で、生徒が学びに向かう力を育ててきました。これからは現代的な生徒の安全・安心を第一義に、先生方の働き方改革も加えて、行事の再検討をしていかなければならないと考えています。あわせて、デジタル学習基盤を活用した生徒の学習のさらなる自立化や、先生方の業務量削減を考えています。校長として21世紀の学びを創造していくための舵取りをし、持続可能な学校にするべく努めていきます。
仙台二高は昔から改革を進め、新しいことを取り入れる学校。伝統を大事にしつつも、医進会やキャリア研修、グローバル教育など新たな取り組みを次々と生み出し、学びの現代化を進めてきました。これからも未来志向で、したたかに・戦略的に変化し続けたいですね。
(文:柿崎明子、注記のない写真:仙台第二高校提供)