CFO(最高未来責任者)のミッションは、共に活動する5人の仲間「Futureサミットメンバー」とユーグレナのサステイナビリティーに関するアクション、達成目標を策定することだ。第1期のメンバーが最も注目したのは「環境問題」だった。

第1期のメンバーは「すでに地球は危機に陥っているのに、みんなが行動できないのはなぜか」と考え、「環境問題を『自分事化』するのが難しいのであれば、消費者が意識せずとも環境に配慮した行動を取れる仕組みを企業が構築すればいい」という結論に至った。

そこで、「飲料用ペットボトル商品の全廃」をユーグレナに提言。メンバーたちの真剣な訴えにユーグレナも応え、飲料用ペットボトル商品の全廃を決断。さらに、一部商品でストローの有無を選択可能にするなどの施策によって、2021年までに商品に使用する石油由来プラスチック使用量の50%削減を目指すと宣言した。

初代とは違う「爪痕」を残したい

ユーグレナとしては大きな決断であり、東証1部上場企業として社会に与えたインパクトも大きなものだった。そのような大きな成果に続く2期目のメンバーたちだが、プレッシャーは感じていないという。

2期目CFOの川﨑レナさん(中央)と2期メンバー、初代CFOの小澤杏子さん(左から2番目)と共に

2期目CFOの川﨑レナさんは次のように語る。

「CFOに選んでいただいた以上、期待に応えなければならないという責任を感じています。でも、私もほかのサミットメンバーも、全員が18歳以下の子どもです。だから、大人っぽく考えなくてもいい。子どもみたいな発想、自由な考え方でやっていけばいいと思っています。環境問題については、第1期のCFOとサミットメンバーたちが、ユーグレナにも社会にも大きな爪痕を残してくれました。なので、私たちは違う方向から持続性という問題を捉え、新しい爪痕を残すつもりです」

第2期生がテーマとして俎上に乗せているのは、「サステイナビリティーの再定義」だ。

「日本ではサステイナビリティーって言えば環境だよね、と考える人が多いけれど、そうじゃない。人間一人ひとりがどう多様性を持って、自分らしく生きていくかといううえでの持続性だと思っています。そうしたところから、ユーグレナのサステイナビリティーに対する考え方を再定義し、会社が設定した目標をいかにして達成し、社会を動かす原動力となっていくかを具体的に提言したい。ユーグレナなら、例えば女性差別や人種差別の撤廃を実現し、社会的にも差別反対の拠点になりうると考えています。今は、そのための施策についてアイデアを出し合っている段階です」

ユーグレナ Chief Future Officer(最高未来責任者) 川﨑レナ(かわさき・れな)
2005年生まれ。大阪府のインターナショナルスクールに在籍。趣味はミュージカル。11年よりWWFユースメンバー、特定非営利活動法人JUMPのワークショップ選抜メンバーなどを務めるほか、アース・ガーディアンズ・ジャパンを創設しディレクターも務めている

もともと川﨑さんは差別の撤廃、教育機会の平等などへの関心が高い。きっかけは小学生のときに、使われなくなったランドセルをアフガニスタンに贈る活動を紹介する『ランドセルは海を越えて』という本に出合ったことだ。

「日本とアフガニスタン。同じ子どもなのに、どうしてこんなに環境に差があるのか。何で私はこうやって教育を受けていられるのか」。そんな疑問から、まず、ファンドレイジングを中心に教育や人権についての活動を始めたという。ユーグレナのCFO公募を知ったのは、第1期のサミットメンバーの1人が川﨑さんのクラスメートだったからだ。

「2期目の募集が始まったときに、『レナ、やってみなよ』と声をかけてくれたんです。これまでも、企業や団体が企画する社会貢献活動の10代メンバー募集にエントリーしてきましたが、全敗していました。高校生になれば、大学受験のために学校の模試の回数が増えるので、こうした活動をするのも中学生まで。ユーグレナへの応募が最後の挑戦でした」

背水の陣で書き上げた1200字の応募エッセー。「あなたにとっての『サステナビリティ』とは何ですか? また、ユーグレナ社がよりサステナブルであるために必要なことを教えてください。」というテーマに対して、思いの丈をぶつけた。

さらに、地に足の着いた活動をしている人たちをユーグレナの化粧品のパッケージで紹介したらどうかというアイデアなども応募エッセーに盛り込んだという。実際に、初代CFOの小澤杏子さんのイラストを描いたパッケージを作り、面接時にプレゼンテーションしたそうだ。

Z世代の誇りにかけて活動し続ける

Z世代であるということも、川﨑さんにとって大きな原動力になっている。

「あらゆる負の社会問題が噴出する中で生まれたのが、Z世代。今まで通用してきたことがまったく通じない世の中になってきていることを、小さい頃から痛感しています。ゆとり世代と揶揄されることもありますが、私はZ世代であることを誇りに思っています。何よりも私たちZ世代の強みは、デジタルネイティブであること。日本ではレアケースかもしれませんが、海外のSNSに目をやれば、人種差別主義の人たちとネットで戦いながらスターバックスのラテを飲み、オンラインで世界トップ大学の授業を渡り歩くなんてことは、ごく普通になっています。

こうしたZ世代の特性を活かして、私は世界を変えていきたいと思っています。その原動力は『怒り』です。あるパネルディスカッションに参加したときに、アメリカから来ていた子が言っていたのですが、この世の中に感じる怒り、自分のポジショニングに対する怒り、子どもとしての怒りをエネルギーにして活動しているのだと。それを聞いたときに、まさにそのとおりだな、それがいちばん自分を強くするなと思ったのです」

背水の陣でユーグレナのCFO公募に挑戦。1200字の応募エッセーに思いの丈をぶつけた

「ただ、母からは『あなたはまだ何もやっていない』と言われています」と川﨑さんは少しうなだれる。意見を言える場をもらっただけで、それに見合った活動にまだ結び付けられていないというのが理由だ。

「将来的に日本のビジネス界であれ、福祉界であれ、どんどん若い世代が重要なポジションを担っていくべき。そういう機会を設けられるようにしていくのが、私の義務だと思っています。以前は国連大使になりたいとか、海外志向の夢を考えていたけれども、今は日本がリーダーシップを取って、海外のレベルを上げていくようにならないといけないんじゃないかと思うようになりました。それを実現できるよう、まずは海外の大学でインターナショナルリレーションズを学び、国際的共存について理解したうえで活動していくつもりです」

「ユーグレナでの活動を将来に持っていきたい。この活動自体が私の将来だと考えています」と意欲を見せる川﨑さん。彼女なら燃える怒りをパワーに変えて、Z世代の責任と義務を果たしてくれることだろう。

(撮影:今井康一)