「会議中にスマホを見る上司」が失っているもの 自分の役割をよくわかっていないのか
アリストテレスは、説得の3原則として「ロゴス」と「パトス」と「エトス」をあげているが、これはそれぞれ「ロジック」「共感」「信頼」という意味だ。著者たちが提唱する枠組みはアリストテレスの時代から存在していたということであり、さらに現代の心理学の中にも同じようなパターンを見つけることができる。
あなたは周囲に対して、どのようにして「自分は信頼に足る人物だ」というメッセージを発しているだろうか? 私たちはえてして、自分が周りにどんな情報を発しているかを自覚していない。しかも、その情報がミスインフォメーション(誤情報)であることも多いほどだ。
「信頼が低下」するとき
さらに困るのは、ストレスがこの問題をより悪化させることだ。人はストレスがかかると、信頼を失うような行動ばかり取ってしまう。たとえば、就職の面接を受ける場面を想像してみよう。ここで採用される確率を上げたいのなら、本当の自分を見せるのがいちばんなのだが、ストレスのせいで違う自分を装ってしまうことが多いはずだ。
ここでのいいニュースは、ほとんどの人が信頼のシグナルを安定的に発しているということ。つまり、態度をほんの少し変えるだけで大きな効果が期待できる。
まず気をつけたいのは、信頼の問題はだいたいいつも同じパターンで起こるということだ。オーセンティシティ、ロジック、共感のどれかが揺らぎ、信頼が失われたり、信頼関係を築くのに失敗したりする。このパターンを「信頼の揺らぎ」と呼ぶことにしよう。
信頼の低下は、たいていこの揺らぎが原因になっている。そしてどうやら、人は誰でも信頼の揺らぎを経験するようだ。
その一方で、信頼の3つの要素のうち、「これだけは絶対に揺らがない」というものが誰にでもあるはずだ。たとえ夜中の3時にいきなりたたき起こされたような状況でも、その要素だけはぜったいにあてにできる。このパターンを、「信頼の揺らぎ」に対して、「信頼の錨(いかり)」と呼ぶことにしよう。オーセンティシティ、ロジック、共感のうち、どんな状況でもほぼ揺らがない資質があなたにとっての「錨」だ。
著者たちは、この10年の間にあらゆるタイプのリーダーと一緒に働き、信頼の問題を解決する手助けをしてきた。クライアントにはベテラン政治家もいれば、ミレニアル世代の起業家や、ウーバーのような「破壊的企業」のリーダーもいる。