串カツ田中「炎上劇」対応がマズいこれだけの理由 インフルエンサー投稿発端に不安の声が広がる

拡大
縮小

まず「早い」だが、今回の発端は「社内チャットでの告発」だ。つまり告発者が誰か、会社はすでに把握している。関係者への確認もすぐに終わるだろう。翌日には「謝罪リリース」を出すべきだった。

「潔さ」の面でも「変化球」ではなく「ストレートな謝罪」でよかった。今回の不祥事は「会社ぐるみ」ではない。一部の問題ある社員の不祥事なのだ。全国に数百店舗と店を構える庶民的な居酒屋で「全従業員が完璧な対応をしている」と期待している者など、まずいない。「行き届かぬところがあった」と、会社として素直に詫びれば受け入れられたはずだ。

そして、「早い」と「潔さ」を実効あるものとするためにも、「社長本人が出る」ことが重要となってくる。社長が出なければ、社内で迅速な調整ができない。社長でなければ、社外が潔さを納得しないからだ。

社長の名前を出しつつ、対応したスシロー

「社長本人の出方」では先月の「スシロー」のツイッターでの対応が大変、参考になる(参考:スシロー、社長の「ツイッター降臨」が意味する事)。

「店舗での悪ふざけ動画」が拡散し客足が落ちた際、「スシロー」への支援の輪が広がった。その感謝として「スシローの公式アカウント」は「社長からのメッセージ」を投稿した。

「スシロー」の対応が巧みだったのは、「社長のアカウント」ではなく「公式アカウント」が投稿した点だ。「スシロー」は何も常に「完璧な顧客対応」ができていたわけではない。昨年は「おとり広告」で、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けている。

もし「社長アカウント」だったら、過去の不祥事で「スシローに物申したい」匿名アカウントと直接、対峙することになりかねない。だが「公式アカウント」であれば、「社長の感謝」を伝えながらも社長自身は矢面に立たなくて済む。実に巧みなやり方なのだ。

謝罪の基本である「早い、潔い、社長本人が出る」。これらをすべて備えた「危機管理の見本」がある。2004年に起きた「ジャパネットたかた」の個人情報漏洩事件だ。事件を伝える朝刊が出た午前中には社長本人が謝罪記者会見を開いている。そして、原因もよくわからない状態のなか、会見で営業自粛を発表したのだ。

次ページ記者すらファンにしてしまう社長もいる
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT