串カツ田中「炎上劇」対応がマズいこれだけの理由 インフルエンサー投稿発端に不安の声が広がる

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私がPR戦略コンサルタントとして、「串カツ田中」の対応で感じた最大の問題点。それは「SNS時代のスピード感に対応できていない」ということだ。

「SNS時代」では従来の常識は通じない

私自身は長年、テレビ東京の経済部記者として育ったので、「報道機関での取材原則」が体に染み込んでいる。既存の報道機関であれば、情報を報じる前に必ず「裏取り」を行う。

「裏取り」とは「事実関係の確認を取ること」。告発している本人に直接会うのは当たり前で、関係者にも告発の事実をぶつけ、「間違いない」という確証を得てから報道する。「日銀総裁の人事」や「凶悪犯の逮捕」といった注目度の高い案件であれば、何重にも「裏」を取るのが「既存メディアの常識」だ。

私がテレビ東京記者だった頃にも、告発の電話や手紙を何度も受けたことがある。だが、電話の話は支離滅裂、手紙は「過激派の活動ビラ」のようなものしか見たことがない。すべて「裏を取るまでもなく、怪しい」のだ。

こうした告発の不確かさは、現代の「SNS時代」でも大して変わらない。先日、ある朝の情報番組のプロデューサーと話したときのこと。その番組では積極的に「SNSで見つけた情報」を報じている。だが、探しても実際に放送できるのは「半分もない」という。「裏取り」すると「真偽が怪しい」「当事者の一方的な言い分」など、「放送するには危なすぎる」ものがほとんどだというのだ。

こうした「裏」を取る作業は当然、それなりの時間がかかる。つまり、不祥事を抱えた企業から見ると、新聞や週刊誌しかなかった時代は、対応するだけの時間的猶予が比較的あったということだ。

だが、この「SNS時代」では従来の常識は通じない。「SNS時代」の不祥事に対処するには、企業の側にもこれまでにないレベルの瞬発力が求められるのだ。

「串カツ田中」が「謝罪リリース」を発するまでにかかった時間は、2日だ。大企業としては必ずしも「遅い」とは言い切れない。だが、現代の「SNS時代」においては、これでも「遅い」のだ。

実際、「空白の2日間」で不祥事はツイッターで大いに拡散した。さらに騒動を受けて、「文春オンライン」は昨年2月の「『串カツ田中』創業者のセレブ誕生日パーティー写真 従業員には“会食自粛要請”の最中」という記事を再配信。過去の「不名誉」まで蒸し返されてしまった格好だ。

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