串カツ田中「炎上劇」対応がマズいこれだけの理由 インフルエンサー投稿発端に不安の声が広がる

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高田明社長(当時)が見事だったのは、事件発覚直後にとどまらない。私がテレビ東京の記者だった頃、営業自粛中の「ジャパネットたかた」に取材依頼をしたことがある。「再発防止に懸ける社内の密着取材」を依頼したのだ。だが広報の回答は「取材を受けられる状態にない」。あっさり断られたのだ。

広報の取材拒否からしばらくして、私の携帯が鳴った。見知らぬ番号だが出てみると「高田です」。広報から私の番号を聞いて、高田社長本人がかけてきたのだった。テレビで聞き慣れた高音ではなく、低く落ち着いた声。私はこのときまで高田社長と一切、面識はない。

記者の仕事は「断られてからがスタート」でもある。私は「直接交渉の好機」と、説得にかかった。電話口で1時間近く粘ったが、答えは変わらなかった。だが、取材拒否にもかかわらず、高田社長の誠実な対応にすっかり「ファン」となってしまったのだった。

SNSもない時代にこれほどまでに迅速、そして丁寧な対応を行った高田社長は「見事」と言うよりない。

消費者という「外」に敏感だった企業だったが…

さて、元から「串カツ田中」は今回のような、SNS時代に対応できない、下手な対応をする企業だったのだろうか。

2018年、「串カツ田中」は喫煙客離れを起こしかねない「店内全面禁煙」をいち早く導入した企業だ。コロナ禍の最中には「おうちで串カツ卓上フライヤー」を販売した。自宅で楽しむことが習慣化すれば、コロナ禍が明けた後に客足が遠のく懸念すらあるが、それでも踏み切ったのだ。このように、長く消費者の動きを敏感に捉えてきたからこそ、極めて厳しい競争の飲食業界で上場するまでの成長を遂げたのではなかったのか。

しかし、今回の「謝罪リリース」では、「社内基準に即した食材管理」「社内ルールが一部遵守されていませんでした」「社内規程に基づき厳正な処分」「従業員の社内マニュアルに基づく食材・衛生管理の徹底」といったふうに、やたら「社内」という単語が目立つ。

時代、そして消費者という「外」に敏感だった企業が、いつしか「内」の調整に手間取り、後手をとったのだとしたら、昔からの「串カツ田中」のファンとして、残念というよりない。

下矢 一良 PR戦略コンサルタント

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しもや いちろう / Ichirou Shimoya

早稲田大学理工学部卒業。テレビ東京に入社し、『ワールドビジネスサテライト』『ガイアの夜明け』を経済部キャップとして制作。スティーブ・ジョブズ氏、ビル・ゲイツ氏、孫正義氏、三木谷浩史氏、髙田明氏、藤田晋氏、前澤友作氏らにインタビュー。その後、ソフトバンクに転職し、孫正義社長直轄の動画配信事業(Yahoo!動画、現・GYAO)を担当。「ソフトバンク・アワード」を受賞。現在はPR戦略コンサルタントとして中小企業のブランディングや宣伝のサポート等を行う。

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