「リスキリングせよ、さもなくば自己責任」の未来 「ガンダム」が描いた「デジタル社会」への適応
『ガンダム』シリーズの主要登場人物であるアムロ・レイやシャア・アズナブルは並外れた認識力や直感力、特殊な脳波を持った「ニュータイプ」として描かれています。「ニュータイプ」についてはさまざまな見解があり、原作者の富野由悠季氏ですら理解が一貫していないようですが、「ニュータイプ」は宇宙で成長を遂げたことにより人間の限界を突破した人類であるとも言われています。
また、『ガンダム』シリーズの中には人為的にニュータイプを創り出す「ニュータイプ研究所」があり、そこで訓練を積んだ「強化人間」がいることも設定されています。ここに至る思想も「テクノクラート新自由主義」的です。
リスキリングの機会を生かせなかった人の末路
どうしてもリスキリングを鼻白んでしまうのは、底流にある「テクノクラート新自由主義」の末に「心地よい生活」を思い描くことができないからです。スキルがないことを自己責任とし、リスキリングという機会を与えたにもかかわらずデジタル化できなかった場合、その人たちが割を食うのは仕方ないという未来が見えるからです。
テクノクラート新自由主義者たちは労働者階級の取り残された人々のことを、シャアの言う「地球の重力に魂を引かれた者たち」のように捉えていることでしょう。
最近でも「高齢者は集団自決すべき」という発言をした、アメリカの大学に籍を置く日本人経済学者がいました。この考えは既得権益を有する「地球の重力に魂を引かれた者たち」は滅びるべし、というシャアの思想と変わりません。
一方で、あたかも「地球の重力に魂を引かれた者たち」側の言い分を形にしたような条文を発表した市町村もありました。その中に書かれた「都会風を吹かせないよう心がけてください」という文言は、都市に住む人々が想像する田舎暮らしの面倒臭さを凝縮しています。
この言葉を聞けば、シャアが地球に住む人類の滅亡を決意したことほど積極的ではないにしても、「もう滅びるに任せよう」と多くの人は感じるでしょう。
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