「リスキリングせよ、さもなくば自己責任」の未来 「ガンダム」が描いた「デジタル社会」への適応

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敵役であるシャアですが、三つの主要な『ガンダム』作品に登場しています。最初が「一年戦争」を扱った『機動戦士ガンダム』。その戦争の終結から7年後を描いた『機動戦士Zガンダム』。最後はその5年後にシャアが引き起こした戦争が描かれる、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』です。

特に『逆襲のシャア』において、シャアは地球に核を落とし、人為的に氷河期を発生させ、地球に住む人類の滅亡を目論むことになります。なぜシャアは、最終的に地球に住む人類の滅亡を望んだのでしょうか。その理由を説明するにはシャアのライフヒストリーを追う必要があります。少々長いですが、お付き合いください。

合理的な判断をしない人たちへのいらだち

まず、シャアという名前は本名ではなく、元々はキャスバル・レム・ダイクンと言います。彼の父はジオン・ズム・ダイクン。「ジオン」という名からもわかるとおり、スペースコロニーを地球連邦から独立させジオンという国をつくった革命家でした。

しかし、独立後すぐにジオンは急死します。その部下のデギン・ザビが政権を握り、ジオン国はザビ家が支配することになったのです。シャアはデギンが父を暗殺したと考え、ザビ家に復讐を誓います。素性を明かさぬように仮面を被り、名前をシャアと変えてジオン軍のエースパイロットとして活躍します。

そのシャアの父が唱えた思想が「ジオニズム」です。この思想は地球連邦政府の横暴と圧政に対して提唱されたもので、全人類が宇宙に移民することにより地球環境の保全を図り、また、スペースコロニーが地球連邦政府から独立することで平等な社会を実現できるというものでした。

さらに人類は過酷な宇宙環境に進出し適応することで、生物学的にも社会的にもより進化した「ニュータイプ」になれるというものも含んでいます。シャアは、宇宙移民を差別し搾取する地球民のことを「地球の重力に魂を引かれた者たち」として、「ジオニズム」実現のためには滅ぼす必要があると考えています。

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