ベトナムやタイでは、信号や横断歩道がなくても、バイクや車がどんどん来ていても、その合い間をぬってずんずん渡っていきますし、フランスでは自分の目で見て安全を確認したら、信号が赤でも渡るのが普通です。
実際、英国王立協会の科学誌『ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス』に発表された論文によると、「フランスでは、歩行者が10回に4回の割合で信号無視をして横断歩道を渡り、日本では100回に2回の割合だった」(フランスのストラスブール大学の研究チームが、ストラスブールの3か所、名古屋の4か所の横断歩道で調査)と報告されています。
フランス人の多くは、こう考えるようです。
・車が通らないのに信号を待つ必要はない
・そもそも道路は歩行者優先
・ルールや規則は、秩序を保つために必要。でも本来、人間の生活をスムーズにするためにルールがあるのであって、ルールを守るために人間が存在しているわけじゃない
法律上の取り決めとして、信号無視はフランスでも違反になります。ただ、本当に取り締まりが行われることはほとんどなく、「左右を見て、安全なら、本人の責任で気をつけて渡ってOK」というのが暗黙の了解になっています。
これは、「法律は人間が作ったものだと知ったうえで、それをどう解釈するかは当事者である自分が決めること」と考えているからです。
ルールが疑問なら変えられる社会システムに
一方、日本では「法律は『お上』が決めたもの」「破って面倒が起きたらイヤ」「まわりの人は守っているのに自分だけ守らないのは恥ずかしい」という感覚で、車も何も通らない赤信号が青に変わるのをおとなしく待ちます。
フランス人からすると、真夜中の赤信号で立ち止まっている人がいる風景は奇妙に映るかもしれません。なぜなら、フランス人には「人間が自分たちの生活をよくするために法律を作ったんだ」という自覚があるからです。
法律は人間のためにあるわけですから、本来、危険がなければ自分の判断で渡ってもよいという法律をつくっても問題ないはずです。
しかし日本では、自己判断を許してしまったら、法律を守らない人間がたくさん出て、大きな事故につながる可能性があると考えます。
だから、目の前の状況で判断することよりも「赤信号は必ず止まる」というルールを優先したのです。
これは、日本とフランスどちらが正しいという話ではありません。
僕が1つめの質問で伝えたいのは、「どちらがいいかは、国任せにするのではなく、自分たちで話し合って決めるべきだ」ということです。
もしそのルール(法律)を疑問に思うなら、それをみんなで変えられる社会システムにしていくことも大切です。
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