一方、人間があつかう課題は、想像もしくは因果関係の想像で、未来が対象だ。そこには、まだ機械が到達できていない。機械は想像力を持っておらず(たとえば機械は新しいボードゲームを考案しない)、因果関係を想像することもしない(複数のものごとの間に関連性がある理由を考えたりはしない)。
なぜものごとが起きるのかという仮説を立てられるのは、人間の精神だけだ。また、時間軸の面では、機械は未来を想像することができない。
「ひょっとすると、こんな未来がやって来るのではないか」と思いを巡らせるのは、人間だけだ。現在のことではなく、1年先や10年先の可能性を想像することは、人間の集中力がなければ不可能なのだ。
人間はこの能力を持っているからこそ、まだ存在していないものごとを考慮できる。機械のアルゴリズムはもっぱら既知の情報を処理するが、人間の脳は未知の情報や可能性に対処できる。
市場アナリストの仕事を例に考えてみよう。すでにテクノロジーによる人間の能力の補強が実現しており、そのおかげで業界データの精巧な分析結果を利用できるが、集中してアナリストの仕事に取り組むときは、過去と現在だけでなく、未来を想像しようとする。つまり、手に入るデータを基に、未来に関する仮説を立てる。そして、意思決定を調整し、判断を下す。
人間ならではの課題を行う能力が重要に
このように人が集中力を発揮しやすくする4つのポイントを以下に掲げてみよう。
人間の脳が「未来を想像する能力が求められる課題」を行うには、休息が欠かせない。脳に十分な休息を取らせようと思えば、1日平均8時間の睡眠が必要だ。睡眠が不足すると、想像力を発揮したり、因果関係に関する仮説を立てたりするなどの高次の能力を発揮できない。
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