きちんとした格好をしていれば、相手に「この組織は規律がしっかりして優秀で強そう」だという印象を与え、それだけでも抑止力になる。
この「シグナリングによる抑止」にはたいしたコストがかからないので費用対効果が高い。また自衛隊内では、規律の遵守されている組織は当然に精強であるとされている。
ビジネスでも、優秀な人ほど「身だしなみ」に気を使う
言うまでもないが、ビジネスでも身だしなみは重視される。
いくらスマートカジュアルが受け入れられつつあるとはいえ、スーツ姿で出かけたときと、ジャケパンで出かけたときでは、仕事でも飲食店でも買い物に行っても「受ける扱い」がやや違う、というのは読者のみなさんも経験上、よくご存じだろう。
筆者が勤めていた外資系証券会社でも、国内外問わず優秀なバンカーほど、綺麗にプレスされたダークスーツに白いシャツ、上質だが目立たないネクタイに黒いベルト、レースアップされたピカピカの黒い革靴、という、きちんと手入れされたやや控えめなスタイルの人が多かった。
これにも意図がある。
「私がいい身なりをしているのは私が仕事ができて高給取りだから、つまり私は優秀なバンカーなので、安心して仕事を任せてください」という暗黙のシグナリング。
自衛隊での無言の抑止力と同様、「他の会社に頼むより、私を使ったほうがいいですよ」と無言のうちに相手に伝える、費用対効果の高い手段だ。
「身だしなみ」だけではなく、「時間厳守」「法令遵守」(コンプライアンス遵守といったほうがピンとくるかもしれない)など、訓練に参加した自衛隊においても、私がいた「アメリカ系企業でのビジネス慣習」においても共通する部分が多いことに気づかされた。
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