精神科医である私がこの予備自衛官補の訓練に参加したのは、『ヒルビリー・エレジー』という本を読んだことがきっかけだった。
アメリカの没落した工業地帯の街で生まれ育ち、
まったく先の見えない境遇だった自分を今の自分にしてくれたのは、自分を変えてくれた海兵隊での訓練と生活のおかげだ、とその本に書かれていた。
自分は勉強は得意で医者になったものの、昔から身の回りのことが全然できなかったが、『ヒルビリー・エレジー』の著者と同じように、自衛隊での訓練を受けることによってより自立した自分に成長できるのではないかと思って訓練に参加した。
基礎教練を受け、掃除、洗濯、アイロンがけ、ベッドメイクなどの身の回りのことを実際に自分でやってみて、わずかな期間だったが得るものは多く、参加して本当によかった。
O先生は訓練の最後、教場にひとり立ち上がり、全員の前でとつとつとこの話をした。
筆者は、外資系の会社でしか働いたことがないことに引け目を感じ、「何かこの国で人のために役立つことをしてみたい」という強い思いを持って志願したが、O先生のように自分を変えるために訓練に参加する人もいることに初めて気づかされた。
筆者も最初は自衛隊という組織になじめるかどうか、当然ながら不安はあった。
だが、訓練を乗り越えたあとは、ホッとした気持ちと「何かをやり遂げた」という充足感がないまぜになり、「自分が万が一のときに(ないことことを祈っているが)誰かの役に立てるかもしれない」という前向きな気持ちに包まれた。
同様に一緒に訓練に参加した人からも、「もう二度と参加しない」というような声は、少なくとも私の周りで聞こえてくることはなかった。
訓練後半にご一緒した複数の病院を経営する医療機関の敏腕理事長(ちなみに彼はその後予備二等陸佐に任命された)も、自分の病院の医師にぜひ予備自衛官になるようすすめる、とおっしゃっていた。
急速に緊迫しつつある世界情勢の中で、万が一が起きたときのことを否が応でも意識させられる機会も増えた。
自分の身を守り、家族や周りの人を助けられるようになるために「何かできることはないのか」と思いを巡らせたときに、「予備自衛官制度」というものが「選択肢のひとつ」としてあることを思い出してみてほしい。
*この記事の前編「2週間の”ガチ訓練”で「予備自衛官」になってみた」
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