BTS、シティポップ、藤井風が世界で売れる共通点 内向き日本と大違い?世界でウケた意外な理由

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K-POPから見習うことがあるとしたら、それは海外に向けた「発信力」だと思います。

そもそも今、シティポップを世界に広めているのは韓国のDJのNight Tempoですし、J-POPをK-POPアイドルがカバーして、日本のアーティストの世界的な人気に火がつくこともあります。せっかく日本は世界にアピールできる資産を持っているのに、これでは他国を介して、情報発信しているようなものです。

必要なのは多言語での情報発信

前回も触れましたが、韓国人には英語を話せる人が多く、国際感覚も進んでいます。海外から帰ってきた人たちが音楽業界に入り、英語など多言語でスピーディに大量の情報を発信する、ということが標準的に行われているのです。

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片や、日本人には英語を話せる人が少ないうえに、国内市場だけで音楽ビジネスが成立することから、海外への発信に消極的。そこまでしなくても、好きな人に聴いてもらえればいいという感覚なのかもしれませんね。

でも僕は、日本にもいい曲がたくさんあるのに、この状況はもったいないと思っています。日本の楽曲で、英語など多言語の情報発信に力を入れたことが、世界的ヒットにつながったという実例もあるからです。

最近でいうと、藤井風さんの「死ぬのがいいわ」。この曲は2020年に発表されたアルバム『HELP EVER HURT NEVER』の収録曲ですが、昨年突如として世界的に大ヒット。タイやインドネシアのTikTokをはじめとするSNSユーザーの間ではやったことがきっかけで、その人気は他の国々にも広がり、SpotifyやApple Musicなど音楽配信サービスでのグローバルチャートでランキングが急上昇しました。

そんな世界的な動きが見えてきたところで、藤井さん本人や彼が所属するユニバーサルミュージックは、英語でどんどん情報を発信し始めたのです。また、「死ぬのがいいわ」はアルバム収録曲であることからMVがなかったため、武道館で行ったライブパフォーマンスをYouTubeにアップ。しかも、歌詞には、英語はもちろん、タイ語、インドネシア語、韓国語など、10の国と地域の言語の字幕がついています。

結果的に、昨年、Spotifyの「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」で1位を獲得しました。これまでのJ-POPでは考えられないほどのヒットです。

こうした国際感覚や迅速な対応のほかにも、僕がこれまで韓国と仕事をしてきたなかで、日本には刷新すればもっとよくなると感じるところがあるので、次回お話ししたいと思います。

(構成:保手濱奈美)

古家 正亨 ラジオDJ、イベントMC

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ふるや まさゆき / Masayuki Furuya

北海道出身。北海道医療大学看護福祉学部医療福祉学科臨床心理専攻卒業。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。1998年韓国留学。帰国後K-POPの魅力を伝える活動を、マスメディアを中心に展開。2009年、日本におけるK-POPの普及に貢献したとして、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。日本で開催される韓流・K-POPイベントのMCとして活動し、ニッポン放送「古家正亨 K TRACKS」、NHK R1「古家正亨のPOP★A」など多数のラジオ、テレビ番組を担当。著書に『ALL ABOUT K-POP』(ソフトバンククリエイティブ)、『Disc Collection K-POP』(シンコーミュージック)、『韓国ミュージック・ビデオ読本』(キネマ旬報社)など。

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