平安時代の「オタク女子」夢叶えた姿が“ヤバい"訳 紫式部「源氏物語」にあこがれた女の驚く熱量

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さらに、物語に耽溺しているとき、夢には美形のお坊さんが出てきたという。彼の言う『法華経』の第5巻というのは、実は「女人成仏」について書かれた巻。つまりは女性が成仏するために必要なことが書かれた巻なのである。

当時は「女性はそのままでは悟りを開けず、成仏できない」という考え方が一般的だったので、「それではどうすれば女性が成仏できるようになるのか?」という問いについて詳しく解説したのが『法華経』第5巻だった。が、そんな男女不平等な仏様の教えもなんのその、彼女は物語にしか目がいかなかったという。

成長したら「あんな妄想してた自分、マジ黒歴史!」

家で『源氏物語』全巻を読み、そして「私も大きくなったら綺麗になって『源氏物語』のヒロインみたいになれるかな~!」と妄想していた菅原孝標女。しかし成長してこの日記を書いている彼女は、そんな少女時代を振り返り、「いとはかなくあさまし」と回想している。直訳すると「本当に、浅はかで、嘆かわしい」。

反省していた彼女が何歳だったのか正確には明らかになっていないが、「あんな妄想してた自分、ほんと、バカ……」と頭を抱えていたということである。今風にいうと、「あんな妄想してた自分、マジ黒歴史!」といった感じだろうか。

『源氏物語』全巻は手に入ったが、どうやら『源氏物語』のヒロインみたいな人生を送る、という願いは通じなかったらしい。では彼女の人生は、成長してどう展開していったのだろう? 物語は読み続けられたのだろうか。次はオタク少女の成長した姿を見ていこう。

三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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