「壮絶な卒業試験」38年戦う武藤敬司が今語ること レスラー、経営者…「3つ以上の顔を持つ男」の軌跡

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できることなら、今の時代にレスラーをやりたかった

武藤は、引退試合の記者会見で「引退試合をPPV(ペイ・パー・ビュー)でやりたい」と語っている。その背景には、世紀の一戦として注目された「武尊VS那須川天心」の試合がPPVで50万以上の人たちに券売されたことが関係していた。

「猪木さんや馬場さんが築き上げてきた昭和のプロレスは、地上波のテレビ放送と一緒に発展した。だけど、今のノアにはABEMAやWRESTLE UNIVERSE(プロレス動画配信サービス)がある。ネット配信は国の壁もないから、いろんな可能性が広がっている。

今、プロレス界はすごいチャンスあるんだ。このシステムを活用して世界で活躍するプロレスラーと戦えるわけだから、これからの目標はワールドワイドでの規模感になるんだ。俺は、レスラーになるのが40年早かったと思っている。できることなら、今の時代でレスラーをやりたかったよ」

(撮影:長田慶)

chocoZAP presents KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~』2.21(火) 午後4時〜ABEMA PPVで独占生中継

そう語る武藤だが、引退へのカウントダウンは刻一刻と近づいている。引退試合といえば、アントニオ猪木の引退スピーチが有名だ。

「この道を行けばどうなるものか、危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし、踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。 迷わず行けよ、行けばわかるさ」のフレーズが印象的な詩、『道』を披露した。

武藤敬司が歩んだ“光と影”のプロレス人生。引退試合で最後にどんなメッセージを残すのか。

「喋りなんてしないよ。怪我の影響でちょっと弱気なんだけど、内藤との試合をみんなの記憶に残る生涯のベストバウトをしたいんだ。レスラー人生の全てを出し尽くして、灰になりたいと思っているよ」

集大成となる引退試合のリングで、永遠に語り継がれる言葉ではなく、プロレスという“作品”で観客を魅了する。誰よりも「プロレスLOVE」を貫いた武藤敬司にしかできないスタイルで、プロレス界に偉大な足跡を残していく。

池田 鉄平 ライター・編集者

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いけだ てっぺい / Teppei Ikeda

Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。

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