大腸がんは女性のがん死の原因では第1位(2020年国立がん研究センターがん情報サービス統計)、男性では肺がん、胃がんに続き第3位だ。40代から徐々に増加し、高齢になるほど発症者が増える。
大腸がんによる下血は、便と一緒に出てくる赤黒い血が特徴だ。お腹の左側にある下行結腸や、その下につながるS状結腸、直腸にがんがあるときに見られる。
「出血は便が腸を通過する際、できている腫瘍を刺激することによって出るものです。腫瘍の血管は細く、もろいので、ちょっとした刺激で破れるのです」(白倉さん)
下血のほかにも腫瘍が大きくなってくると、便が通過しにくくなるため、「便が細くなる」症状が起きることもある。一方、大腸の中でも小腸に近い上行結腸、横行結腸では、まだ、内容物(便)が液状なので、こうした症状は起こりにくいという。
また、下血とは違うが、よくいわれる「黒色便(タール便)」があった場合、胃を中心とした「上部消化管からの出血」が疑われる。血の赤い成分に含まれるヘモグロビンには、ヘム鉄が含まれている。胃から出血した場合は、胃酸の影響を受けて鉄が酸化して酸化鉄となるため、血が黒っぽくなり、黒色便になる。
「大腸など消化管の下部にいくにつれ、胃酸の影響は減り、アルカリ性になる。このため、下血は腸の下方にいくほど、黒色ではなく、鮮やかな赤に近くなるのです」(白倉さん)
もう1つは時間だ。血液が体内にとどまっている時間が長ければ長いほど、血液は酸化しやすくなり、黒っぽくなるという。
ここで挙げた病気のほかにも、下血の原因には潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の場合もある。
放置するとがんに進行する病気も
潰瘍性大腸炎やクローン病の場合、べたべたとした粘液に血液が混ざったような粘血便が特徴だ。また、便の形状は下痢便で、腹痛を伴うことが多い。「潰瘍性大腸炎は治療をせずに放置すると大腸がんになるリスクが高くなるので、注意が必要です」。
なお、下血があったときに受診するのは、消化器内科が望ましい。また、下血の原因となる病気を診断するには、大腸内視鏡検査が必要になる。後編では大腸内視鏡検査の進歩や楽に受けるためのコツなどを紹介する。
(取材・文/狩生聖子)
白倉立也医師
1994年、東邦大学医学部卒。同大医学部附属大森病院第二外科、同大医療センター大森病院救急救命センター、埼玉県央病院内科などを経て2008年より松島クリニック内科、2012年より現職。大腸内視鏡および胃の内視鏡(上部消化管内視鏡)の診断・治療が専門。大腸内視鏡の検査数は2023年1月現在で約5万件。過敏性腸症候群や便秘症の治療も得意としている。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本外科学会専門医など。
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