「私は日本人」と語ったアメリカ人歌手が炎上の訳 日本人にはわかりにくい文化の盗用という問題

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「アジア太平洋研究所によると、アメリカにいるアジア人女性の最大55%が性暴力を経験している。彼女たちは信じられないような状況で生活しており、このことは、仕事や留学、旅行でアメリカに行く日本人女性にも影響しています」とローズ教授は話す。

同教授はまた、人種差別は怒りや憎しみとして現れるだけでなく、「無邪気」「無害な楽しみ」として現れることもあるが、後者は他文化への「愛」として捉えられがちだ。ステファニのパフォーマンスは、原宿の子たちが下品で、風変わりで、幼稚であるという非常にネガティブなステレオタイプを助長し、アジア系アメリカ人に対する嫌がらせをするための「武器」にされてしまった、と説明する。

「日本文化の勘違い」に慣れてしまっている

一方、日本人が自国文化の盗用が取り沙汰されていることに無関心であることについて、アーティスト兼原宿ファッションのモデルであり、さらにはカワイイ文化の海外調査も手掛ける紅林大空(はるか)さんはこう話す。

「残念ながらグウェンを知らない日本人が多いことに加え、『外国人』による日本文化の勘違いにも慣れてしまっているのだと思います。着物を着崩すモデルや、謎の漢字タトゥーなど、どれも日本人からすれば勘違いあるあるです。でも、どれも日本が好きでやっているなら嬉しいし、下品でなければいい。

多くの日本で暮らす日本人は人種差別を受けたことがなく、文化や権利を盗用されることも滅多にないので警戒感がありません。私個人は他国の文化をおちょくってもOKだとは思いませんが、多くの日本人は人種差別や文化の盗用に無関心だと感じます」

それでは、この逆パターン、つまり日本によるアメリカ文化の盗用はないのか。これについてカワイイ文化を追うライター、西園寺怜さんはこう説明する。

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