沖縄「やんばるの芸術祭」に見る伝統工芸の課題 今年で開催6回目、どう課題を解決していくか
ちなみに大宜味村は、世界各国の研究者が訪れるほどの長寿の村としても知られている。本フェスのメイン会場にも手作りのジューシー(おにぎり)を差し入れて、手伝いに参加する元気な高齢者の姿が多く見られた。友寄村長は本フェスで「元気なおじいやおばあと観光客のコミュニケーションのつながりも作っていきたい」と語る。
存続の危機にある伝統文化
参加アーティストたちからも、本フェスを通して見えてきた課題や、フェスの役割など、さまざまな声が聞こえてきた。
昨年に続いて2回目の参加となるChim↑Pom from Smappa!Groupのエリイさんは、沖縄の大自然に囲まれる芸術祭であることに興味を持ったという。会場では沖縄在住の高齢芸術家の話を聞き、「どんなに観光しても知りえなかったこの地の精神を、芸術祭を通して体感することができました。その高みを垣間見れるのがアートの役割でもあります」と語る。
西表島在住で85歳にして現役の染織家として活動する石垣昭子さんは、次世代の後継者不足に大きな危機感を抱き「沖縄の植物を使ってこの地で作る伝統的なテキスタイル文化は、いまが存続の瀬戸際」との思いで、今回初めて本フェスに参加した。
石垣さんは、島の伝統文化の認知拡大と普及促進を目的に、文化祭と称した芭蕉布などの工芸品の展示や販売を西表島で定期的に行っている。
しかしそれは、近隣の住民の生活に密着した催事レベルであり、なかなか沖縄本島や県外までは広がっていなかった。本フェスへの参加は、島の文化を外部へ広く発信する大きなチャンスと感じているそうだ。
もちろんそれですぐに危機的な状況が変わるわけではない。若者たちに後継者になってもらうためには、作品を商品として流通に結びつけるなど、生活を成り立たせる環境を作ることが不可欠になるだろう。経済的なつながりを持たせ、文化と産業を結びつける仕組みを作ることで、未来への文化継承の道が見いだせる。
会場で石垣さんは「若い世代のアーティストたちのエネルギーを感じる。世代や地域を超えて文化がつながる場所になっています。ここから島の工芸を発信するのと同時に、この場で感じたことを島に持ち帰って若い人たちに伝えることで、彼らの意識が変わっていくことを期待します」と笑顔を見せた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら