楽器産業の優等生「ヤマハ」を悩ませる大問題 河合楽器やローランドに比べて勢いが弱い

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電子楽器の売り上げは各社で明暗が分かれる(撮影:梅谷秀司)

長引くコロナ禍で電子ピアノや電子ドラムなど電子楽器の販売が好調だ。ステイホームでの趣味として過去楽器に触れていた人や初めて楽器に触れる人まで多くの層が手軽に手に入れられる電子楽器を購入することが増えた。カシオ計算機や河合楽器など電子楽器メーカーがその恩恵を受けている。

国内で電子楽器を扱うのはヤマハをはじめ、河合楽器やカシオ計算機、ローランド、コルグなどがある。アコースティックピアノだけでなく電子ピアノや電子管楽器などを生産するヤマハ、電子楽器のみを扱うローランドから電子楽器のなかでも電子ピアノを主力とするカシオ、河合楽器など得意とする領域は異なる。

電子楽器は電子ピアノ、電子ドラム、電子サックスをはじめとした電子管楽器など多岐にわたるが、最も市場が大きいのが電子ピアノだ。電子ピアノの世界シェアはヤマハが長年首位とされるが、カシオ計算機やローランド、河合楽器の電子ピアノも世界で人気が高い。

国内家電のPOSデータを集計しているBCNによると2020年1~12月の電子ピアノ国内市場は前年同期比10.8%増の成長となった。楽器専門店の山野楽器は「昨年の夏ほどの特需ではないものの、全社の(電子ピアノ)売上累計は前々年を越えており、需要は継続している」と語る。

また、カシオによると、「ピアノなどの楽器は、10歳まで学んだ後に辞める人が多い。子供時代にピアノを学んでいた休眠層がコロナ禍で戻ってきているケースが多い」という面もあるという。

好調なピアノに水を差すある問題

こうした電子ピアノ需要の好調さから、河合楽器は2022年3月期の電子ピアノの売上を前年同期比12%増の128億円と見通す。ローランドも電子ピアノなど含む鍵盤楽器の2021年12月期売上を前年同期比46%増の260億円とするなど、各社が追い風にのっている。

そんななか、いまいち勢いが弱いのがヤマハだ。2022年3月期の第1四半期の売上高は前年同期比35.8%増の231億円で、通期では同9%増の924億円を見込んでいる。通期はコロナ禍以前の2020年3月期の921億円と比べると、横ばいの見通しだ。ローランドがコロナ前の2019年12月期の171億円から52%も伸ばすなど、他社の成長率と比べると見劣りする。

その一番の要因は半導体不足にある。

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