そして「できることからやっていこう」「先に『やめ続けられている人』を目標にしよう」という思考を作り、漠然とした未来への恐怖(不安)を断って、自分を攻撃しない枠組みを設けることが、「精神論」ではなく「技術論」としてのアンガーマネジメント的対処術の一環といえます。
田代氏は、現在所属するダルクの主催者が指導を受けたという外国人神父の言葉「Take It Easy. アル中もヤク中も、一生やめ続けなきゃいけない長いレースだから、気楽に取り組まなきゃ続かない」、「Just For Today. 10年、20年とやめ続けることを考えて悩むより、とりあえず今日1日をしっかり生きていこう」を、著書の中で挙げています。
これらは、アンガーマネジメントのテクニックでは、「コーピングマントラ」という、自分を落ち着かせるための決めゼリフ(たとえば、「大丈夫、大丈夫」「きっと明日はよくなる」といったもの)を唱えたり、「24時間アクトカーム」という、意図的に今日1日は何があっても穏やかに振る舞ってみようという取り組みと、相通じる部分があります。
ポジティブなストーリーを克服の原動力に
ストレスの原因と直接向き合い、難しく考えすぎてイライラや不安にさいなまれるくらいなら、「とりあえず、サラッとやりすごしてしまおう」「ひとまず、怒らない状態でいてみよう」という経験を積み重ね、小さくても確実な「成功体験」から自信を培う。これこそ、怒りへの具体的対処策です。
また、アンガーマネジメントのテクニックに「セルフストーリー」というものがあります。理想とする自分像を目標に定め、理想に向かって歩んでいく自分が主人公のストーリー(成功物語)を書き出し、書いたことを実践するテクニックです。主人公である自分が理想の未来に到達することを思い浮かべ、どんな困難も「成功のための糧」と考えられる状態を目指すのです。
やり方は、「理想の自分像」をゴール地点に設定し、これから起きることや、困難を乗り越える方法、自分が行う努力などを時系列に書き出していきます。折れ線グラフが、スタートからゴールまで右肩上がりになるようにイメージすると、力強いストーリーとなります。短期目標(1年ぐらいのスパン)を設定することからはじめてみるとよいでしょう。
田代氏の場合、メディアのインタビューに対し「いずれは芸能人専用のダルクを作りたい」という夢を語っています。これを「理想の自分像」に掲げ、今度こそ本当に立ち直ってほしいと願うばかりです。
覚醒剤使用という反社会的行為は、決して許されることではありませんし、「罰」を受けなければなりません。しかし、薬物依存症は「罰」ではなかなか治らないという専門家の意見が多いのも事実。罪を償った後は、建設的な再発防止策を講じる必要があります。
アメリカでは、犯罪者の更生にもよく用いられているアンガーマネジメント。興味を持たれ方たは、拙著『パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)をご高覧ください。
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