夫アメリカ、妻日本で「妊活中」夫婦の大胆な選択 「時差17時間」の遠距離婚活から現在まで

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正社員として仕事を続けたい麻衣子さんには願ったりかなったりの条件である。問題は、一緒に暮らす場所だ。

耕平さんも子どもが欲しい。そして、産み育てるのはアメリカのほうが子どもにとって「チャンスが多い」と感じている。

17時間の時差を超えて泣いたり笑ったり

「出生地主義をとっているアメリカで産めば、子どもはグリーンカードどころかシチズンシップをもらえます。僕の周りにもジャパニーズアメリカンはいますが、アメリカでも日本でも活躍している人が多い印象です。アメリカの高等教育は本質的なことを学べますし、就職の面でもシチズンシップがあれば有利です。日本の経済力がどんどん落ちている中、アメリカ企業の給料の高さも際立っています。僕が苦労している分だけ、子どもにはチャンスを与えたいです」

麻衣子さんのほうは「日本のほうが安心して子育てできる」とぼんやり思っている程度だ。実家のある四国に戻るつもりもない。こだわりたいのはやはり長く働き続けている会社だ。

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「ここで培ってきたスキルやお客さんとの信頼関係を生かせるのは今のところは日本国内だと思っています。でも、5年先、10年先には会社の景色も私に求められる役割も変わっているはずです。だから、まずはアメリカに行って耕平さんと一緒に住み、会社とも連絡をとりながら先のことはじっくり考えようと思っています。生まれてくる子どもとは小学校を卒業するまでは一緒にいてあげたいけれど、子どもが希望するならば中学校以降はホストファミリーなどに預けることもあるでしょう。可愛い子には旅をさせよ、と言いますから」

まだ受精卵の「わが子」の将来も考えながら、いまやるべきことを着実に実行している麻衣子さんと耕平さん。その基盤には膨大な量の「話し合い」がある。17時間の時差を超えて泣いたり笑ったりしてきたのだ。鮮明なテレビ通話を安く手軽にできるようになった時代の結婚の形なのかもしれない。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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