昨年大みそかの「第73回NHK紅白歌合戦」(以下「紅白」)の平均世帯視聴率は第1部:31.2%。第2部:35.3%となった(数字はビデオリサーチ、関東地区)。第2部は一昨年より1ポイントの増加。まあまあの健闘ということになろう。
ただし紅白が、このご時世の中、構造的な問題点を抱えていることはいうまでもない(※後出)。今回考えたいのは、音楽的視点による抜本的な戦略の見直しである。そこでまず、昨年紅白の内容そのものを振り返ってみる。
紅白における「ロック」の復権
紅白ファンの音楽評論家として、今回のMVPはVaundyに捧げたい。
出番は「後半」の前半。特別企画「ディズニースペシャルメドレー」で少し弛緩した(失礼)空気を一気にさらっていった22歳。
歌ったのは、まずソロで『怪獣の花唄』。そして自身が作詞・作曲した『おもかげ』を、milet、Aimer、幾田りらという、現代音楽シーンを代表する若き歌姫3人と、見事に歌いきった。
感心したのは、その一見ふてぶてしいパフォーマンスである。圧倒的な声量に加えて、初出場にもかかわらず緊張感などまるで感じさせない態度・風体、さらには「そんなもんか紅白! 行けるよな? 行くぞニッポン!」という大仰なMCは、彼を見て「何だ、コイツ?」と思ったであろう初見層の期待に対して、逆説的に十分応えるものだった。
私(56歳)世代的に言い換えれば、紅白における「ロック」の復権である。今回あいみょんが歌った『君はロックを聴かない』という曲名に表れているように、今や若者の音楽シーンの中で「ロック」はど真ん中カテゴリではなく、ワン・オブ・ゼムになっている。そんな「ロック」が満を持して、紅白のど真ん中にせり出してきたという印象を受けたのだ。
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