昭和生まれのための「紅白歌合戦」10倍楽しむ見方 今年の「紅白歌合戦」は"近年最高"かもしれない
2022年で第73回を迎える紅白歌合戦。昭和の時代は「国民的行事」とも言われ、最高視聴率80%を誇った歌番組の“ラスボス”。それが時代の変化とともに大きく揺らぎ……ということを書いて、もう何年が経つのだろう。
意外に迷走突入時期は早く、1985年頃から視聴率は低下。それまでに築き上げたブランド力と歴史が、逆に高齢者にも若者にも振り切れないという悩ましさも生み、試行錯誤を繰り返している。1990年からは「一年の総決算」から「21世紀に残したい歌」へとテーマが変わっていった。
しかし今、その「時代に、変化に振り回されている感」そのものが現代の音楽の在り方と直にリンクし、興味深い。
正直、演歌・歌謡曲をガッツリ楽しみたいのであれば、裏番組のテレビ東京「年忘れにっぽんの歌」のほうが俄然面白いし、今年の流行という意味では、「CDTVライブ!ライブ! 年越しスペシャル! 2022→2023」(TBS)のほうが充実している。これは方向性を絞れる強みだ。逆にいえば、今の紅白は特徴がないのが最大の特徴。他の歌番組よりジャンルと時代感が混在した“幕の内弁当”感なのである。
特に今年は「加山雄三」「桑田佳祐feat. 佐野元春,世良公則,char,野口五郎」「松任谷由実 with 荒井由実」「篠原涼子」「工藤静香」、37年ぶりの「安全地帯」など、昭和世代が心躍るアーティストの名が並んでいる。その馴染み深さとワクワクに乗り、素通りしてしまっている“未知なる音楽”の感動も見つけられる気がしている。
「大好き」は、「新しい大好き」を連れてくる。紅白は、そのチャンスの一つだ。本稿では、昭和生まれが楽しめる“最旬アーティストの魅力”をお伝えしたい。
柔らかき“道場破り”アーティスト「藤井風」
まず楽しみなのが、「藤井風」。2021年に初出場を果たしたが、とにかく度肝を抜かれた。紅白に、まさかの実家からリモート歌唱。結局ステージに登場したものの、司会の大泉洋も川口春奈も何も知らされていないサプライズだった。紅白歌合戦が初登場のアーティストにここまで場を用意するということにも驚いたが、それに臆さず、堂々と自分の空気を持っていく彼に何より驚いた。着用していたモフモフのスリッパ込みで、とても印象に残っている。
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