正直、この連載で取り上げるには遅すぎたと思っている。昨年、若者を中心に人気が爆発し、年末のNHK『紅白歌合戦』にも出場、幅広い層にその名をとどろかせた24歳の女性シンガー=あいみょん。
今年に入っても、その人気はまったく衰えていない。6月10日付「Billboard JAPAN HOT100」において、あいみょんは40位以上に、何と5曲も送り込んでいる。
12位:『ハルノヒ』
18位:『君はロックを聴かない』
24位:『今夜このまま』
32位:『愛を伝えたいだとか』
驚くべきはこの内、今年のリリース楽曲は『ハルノヒ』だけで、『マリーゴールド』『今夜このまま』は昨年、『君はロックを聴かない』『愛を伝えたいだとか』に至っては一昨年のリリースだということである。
今回は、一部メディアが「あいみょん現象」と騒ぐこの盛り上がりが、どのような音楽的要因によって形成されたのかを考察したいと思う。
なお今回の分析には、主にシングル曲を対象とする。具体的には上の5曲に『貴方解剖純愛歌~死ね~』『生きていたんだよな』『満月の夜なら』を加えた8曲だ。
切っ先鋭い「あいみょんパンチライン」
ブレイクへの要因として、真っ先に浮かぶのが、あいみょんの作詞能力だ。切っ先鋭いコトバづかいが実に印象的なのである。
「パンチライン」という音楽用語がある。主にラップのリリック(歌詞)の中における「決めフレーズ」を意味する言葉なのだが、あいみょんの歌詞には「あいみょんパンチライン」とでも名付けたくなるような切っ先鋭いコトバが、そこかしこに埋め込まれているのだ。
そもそもタイトル自体がパンチラインとなっている曲が多い。『貴方解剖純愛歌~死ね~』は別格として、不思議に口語的な『生きていたんだよな』『愛を伝えたいだとか』や、『君はロックを聴かない』という、いかにも音楽業界を騒がせそうな言い回しなど。
また最新アルバム『瞬間的シックスセンス』(このタイトルも一種のパンチライン)の収録曲=『ら、のはなし』『from 四階の角部屋』などもなかなかのパンチラインだ。
さらには歌詞の中でも、『満月の夜なら』の「♪君のアイスクリームが溶けた」や、『今夜このまま』の「♪とりあえずアレください」などの際どい意味合いを深読みさせるフレーズや、『マリーゴールド』の「♪でんぐり返しの日々」、『ハルノヒ』の歌い出し=「♪北千住駅のプラットホーム」などなど、「あいみょんパンチライン」は尽きない。
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