
吉崎達彦さん(仮名・36歳)は、奨学金1200万円を借りて大学院修士課程まで進んだ男性。現在年収1200万円と成功者のようにも思えますが、さまざまな不運で返済を滞納、JASSOと裁判になってしまったそうです(写真:Kayoko Hayashi/Getty Images Plus/写真はイメージです)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。
「奨学金って踏み倒すことはできないですか? いくら、勉強のために借りた額とはいえ、一般企業に勤めながら返すには結構デカい金額だと思うんですよ」
これは奨学金を借りたことのない人から、筆者が言われたことのある問いかけだ。他には「結婚して名字が変われば逃げ切れる、と母に言われたことがあります」と奨学金返済当事者に聞いたこともある。
かつては教職員などになれば返済が免除される制度があったが、おそらく、それが拡大解釈されてしまったのだろう。
しかし、奨学金はもはや「国が管理しているローン」といえる代物であり、3カ月でも返済を滞納していると、ブラックリスト(信用情報機関)に登録されてしまう可能性だってある。
ともすれば、クレジットカードも作れなくなり、賃貸物件の審査に落ちることもあり得るのだ。
画一的すぎる制度、運用をもう少し柔軟にしてほしい
「奨学金制度がないと今の人生はなかったし、そういう意味では感謝しています。自分の見通しが甘かったのも事実です。なので、制度批判や責任転嫁をするつもりはありません。ただ、画一的すぎる制度、運用をもう少し柔軟にしてほしい。それだけなんです」
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