そう語るのは、奨学金を滞納した結果、日本学生支援(JASSO)と裁判になり、1250万円の一括返還を求められた体験を持つ吉崎剛さん(仮名・36歳)だ。
当然、彼も借りた当初はまさかこんな事態に陥るとは思ってもいなかったというが、一体何があったのだろうか。そして、返すべき奨学金を返せずに、裁判にまで発展した場合はどうなってしまうのか。
父が会社のお金を出会い系サイトに…
吉崎さんは現在、社会人12年目。大手プラントエンジニアリング企業に勤務しており、年収は1200万円程度。専業主婦の妻と、子ども2人の4人家族で慎ましく暮らしている。
肩書だけ見ると、完全に成功者に分類されるが、そんな彼が奨学金を初めて借りたのは高校進学に際して。経済的な理由からだった。
「実家は自営業だったのですが、父はだらしない性格で、自分の会社なのに棚卸しもせずに、どんぶり勘定で経営は火の車。それなのに見栄っ張りな部分があって、高校1年生のときには事務所兼自宅を購入したりと、はたから見るとお金があるように振る舞う……まるで、ハリボテみたいな生き方でした。食べるものに困るほど困窮はしていませんが、お金に恵まれた生活ではなかったですね」
そんな父親の後ろ姿を見て育った吉崎さんは、薬学部に進学し、薬剤師という安定した職業に就こうと考えていたが、経済面から関東圏の国立大学に志望校を変更。無事に現役合格した。
父は入学金を準備してくれたが、家に金がないことに変わりはないため、第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)を借りた。だが、大学に進学して数カ月後、問題が発生してしまう。
「父が会社のお金を出会い系サイトに注ぎ込んでいたことが発覚したんです。その結果、両親は離婚。自分、母、妹の3人で家を出ていくことにしたのですが、半年後には不況の煽りを受けて、父の会社が潰れてしまいます。
前出の事務所兼自宅もまだ購入して3年程度しか経っていませんでしたが、競売にかけられてしまった揚げ句に、ローンは母も共同名義だったので、両親揃って自己破産してしまいました」
こうして、大学入学から数カ月後には、自己破産した母と妹、3人での新生活が始まった。進学に際して借りた毎月20万円程度の奨学金は、新しい暮らしでの生活費にも充てられるようになった。
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