「25歳で入社して、すぐに彼女と籍を入れ、翌年には第一子が生まれました。もともと、彼女とは小学生の頃からの幼馴染で、家族ぐるみの付き合いでした。それもあって、『就職して責任を持てるように結婚しよう』と話していたんです。
ただ出産に関しては、想定外の出費が重なって。妻は切迫早産で入退院を繰り返していたため、入院費がかさんでしまいました。新卒だった当時は保険にも加入していなかったため、一時的にではありますが合計60万円以上を支払うことになったんです。初任給でその額を支払うのはかなり大変で、使い切らずに貯金として残しておいた、奨学金から出すことになりました」
出産に関する費用は、高額療養費制度によって自己負担限度額を超えた分が将来的に返ってくる。しかし、結婚したてで、子どもも生まれたばかりの吉崎さんには当時、それに当てるだけの貯金の余裕がなかった。
年収で判断され、猶予や減額は認められず
そのうえ、就職から半年後に始まった彼の奨学金の返済額は毎月5万5000円もあった。
しかし、吉崎さんに返還期限猶予や減額返済が認められなかった。幸か不幸か高年収の会社勤めゆえ、2年目にして年収がボーナス込みで600万円程度(1年目は350万円程度)あったため、猶予申請の収入上限に引っかかってしまったというのだ。どういうことか。かなりややこしいので、なるだけ噛み砕いて説明していきたい。
そもそもの前提として、返還が難しい場合、「月々の返済額を少なくする(減額返還制度)」「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」「死亡または精神もしくは身体の障害による返還免除」という、3つのいずれかが選択肢として浮上してくる。ここでは「減額返還」か「返還期限猶予」で話を進める。
申請の際には事由(理由・原因のこと)を選ぶ必要がある。具体的には「経済困難」「失業中」「新卒等」「災害」「傷病」……などいろいろ細かく分かれているのだが、「猶予申請には、各事由により、年間収入(所得)金額の基準額が設けられており、基準額を超える場合は猶予承認できません」という。つまり、事由によっては、年収次第で減額も猶予も認められないということだ(JASSOホームページ「一般猶予の申請手続き」による)。
具体的にはどんな年収なのか。たとえば、「経済困難」事由で見てみよう。
ホームページで公開されている「〈経済困難事由〉収入等の基準」によると、給与所得者の場合、わかりやすく収入で審査され、減額返還は「年間収入金額325万円以下」、返還期限猶予だと「年間収入金額300万円以下」という。「経済困難」を申請する事由として選んだ場合、健康に働いていると、猶予も減免ともに意外とハードルが高いのだ。(※いずれも2023年1月時点の条件)
なお、もし「新卒等」という別の事由で申請できていれば、年収証明書の提出が不要なため、減額返還が可能になっていたかもしれない。しかし、吉崎さんの場合は社会人2年目になったタイミングでの困窮であり、「新卒等」での申請が間に合わなかったようだ。
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