「身重の妻は働けず、僕らの生活は精一杯で貯金はありませんでしたが、額面だけで判断されてしまい、初めから猶予される見込みはなかったようです」
こうして、「経済困難」という扱いにはならなかった吉崎さん。手持ちのお金がなくなり、もちろん親に援助を頼むこともできず、1カ月、3カ月、半年……と、滞納を生じさせてしまった。
そして、次に起きたのは「債権回収会社による取り立て」であった。
「奨学金を滞納していると、JASSOではなく委託先である民間の債権回収会社からハガキで督促状が送られてくるのですが、払えずに滞納を続けていると、債権回収会社も変わっていきます。
私の場合、滞納当初からJASSOから倍額以上の返済を毎月求められていました。当然払えないので、委託先である債権回収会社に不可能である旨を伝えたところ、『返さないよりはマシ』ということで、少額返済を提示されていたんです。返済する意思を見せる意味合いもあり、債権回収会社からの電話には毎回誠意を持って対応し、毎月1万〜3万円は返済していました」
JASSOに「現状を打破したい」と相談したが…
こうなってくると、どうしても脳内には「裁判」の2文字が浮かぶ。
もちろん、吉崎さんとしても裁判なんてしたくなかったが、裁判を回避するための行動も、また大変なものになった。
「どうすればいいか尋ねると、『詳しいことはJASSOに聞いてほしい』と言われました。債権回収会社は回収を代行してるだけなので、制度に詳しいわけではないし、人によっては全然理解してないこともあるようです。
そこで、直接JASSOに『現状を打破したい』と、自分の状況を包み隠さずに相談したのですが、対応してくれる人は毎回変わり、その人物によって案内される内容が毎回異なるので、もはや無責任とさえ、感じることが多々ありました。
そもそもJASSOに電話してもなかなかつながらず、1時間かけ続けて、やっとつながっても『後日、担当者から連絡する』で終わってしまいます。その後の電話に1回で出ることができなければ、またこちらから電話をかける必要があり……そんな具合なので、ひとつのやり取りで平気で1カ月はかかってしまいます。これは社会人にはなかなか過酷です。出向ける窓口があったり、メールでの連絡が可能だったら話は違ったと思うのですが……」
しかし、それは焼け石に水。ついには冒頭で紹介したように、JASSOから裁判を起こされてしまった。
「債権回収会社をたらい回しにされ、とある会社から『来月から委託先が変更になります』という連絡を受けた翌月、『法的措置の対応になりました』と、いきなり裁判所から一括請求の書類が届いたんです。そのとき、請求された金額は滞納金も含めて1250万円……。毎月、少しでも返済を続けているつもりでしたが、それは滞納金の延滞利息に充てられていて、元金は全然減っていませんでした」
後編では、JASSOとの裁判の顛末と、同じく奨学金を借りる学生たちのために求める、制度の改善などについて聞いていく。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら