原発事故の賠償責任はどうなっているのか?

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福島第一原子力発電所の事故は、米スリーマイル島の事故に匹敵する甚大な被害を及ぼし、さらに被害規模を拡大し続けている。まずは目前に迫る危機を収束させることが第一だが、今後、焦点になってくるのが賠償責任だろう。

原発事故に対する賠償問題については、「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」(1961年制定)で定められている。原子力損害とは、放射線や熱などによって生じる損害のこと。原賠法は、原発を運転中に事故が発生した場合、電力会社だけが損害賠償責任を負い、メーカーなどは賠償責任を負わないとしている(原子力損害でない場合は、民法や製造物責任法によって賠償責任が生じる)。

電力会社に対しては無限責任が求められ、賠償限度額は設定されていない。仮に賠償額が甚大となり、経営が破たんするなど電力会社では損害を賠償しきれない場合は、国が代わって補償する。過去に原賠法が適用されたのは、1999年に茨城県東海村で起きた臨界事故。このときは放射性物質の飛散などはなかったとされているが、事故を起こした核燃料加工会社JCOが負った損害賠償額は150億円に達した。

ただし、これは通常の条件下で事故が起きた場合。今回のような「想定外の巨大地震」による事故は、電力会社の賠償責任とはならず、国が必要な措置を講じることとされている。戦争やテロによる事故も、同様の扱いだ。

原賠法がなければ、原子力事故が起きた場合の倒産リスクが高すぎ、民間企業は原子力産業に参入することができない。また、原子力損害賠償の仕組みがないままだと、賠償責任を負った会社が倒産し、被害者が補償を受けられない事態に陥る可能性が高い。原賠法が作られた背景には、このような理由がある。

ちなみに、社団法人日本原子力産業協会によると、米国では電力会社の責任は有限で、保険や共済で手当てしている125億ドル(約1兆円)が上限。損害額がこれを超える場合は、大統領が議会に補償計画を提出し、議会が必要な行動をとることになっている。

ドイツも賠償責任は原子力施設の運営者にあるとされており、25億ユーロ(2800億円)を保険で担保。ただし、米国と異なり運営者は無限責任で、25億ユーロを超す損害についても賠償責任を負う。「異常かつ巨大な自然現象」などによって発生した損害が政府補償の適用対象となる点は日本と同じだ。
(長谷川 高宏=東洋経済オンライン)

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