N-BOXとルーミーが売れる「好ましくない」事情 車の実力以上に大きい世の中の変化による影響
軽自動車の販売比率が40%以上に達すると、小型車の需要を奪ってしまう。小型/普通車のみを生産するトヨタには危機感が生じて、軽自動車の販売増加にストップをかけるコンパクトカーが求められた。そこで、傘下のダイハツが約2年の短期間でルーミー/タンク/ダイハツ「トール」を開発し、前述の通り2016年に発売した。
2014年の軽自動車市場は、先代N-BOXやタント、日産「デイズルークス」など、すでに全高1700mm超のボディにスライドドアを持つスーパーハイトワゴンが主流になっていた。
そうなると、軽自動車に対抗するコンパクトカーも、同じタイプにする必要がある。ルーミーが、N-BOXやタントを拡大したようなスタイルになったのには、こんな理由があったのだ。
この経緯を見ると、軽自動車のN-BOXが国内販売の総合1位、ルーミーが総合2位(小型/普通車の1位)という順列も納得できる。要は小さなボディで背が高く、スライドドアを持つ車種が人気なのだ。
維持費は軽自動車と変わらない?
ルーミーの人気をトヨタの販売店に尋ねると以下のような回答を得た。
「今の比較的若いお客様は、ミニバンを所有するご家庭で育った事情もあり、2列シート車でもスライドドアを好む。そのためにルーミーの人気が高まり、他社の軽自動車と比べて選ばれることも多い。ルーミーの決め手は、5ナンバーサイズの小型車になること。軽自動車よりも全幅がワイドで安心感があり、乗車定員も5名だから、4名の軽自動車に比べて実用性が高い。その一方で価格は同タイプの軽自動車に近く、小型車のルーミーには割安感が生じている」
ミニバンは、ホンダの初代「ステップワゴン」などが発売された1990年代の中盤から、急速に普及した。このころに生まれ、幼少期からミニバンに親しんできた世代が今、子育てをしている。ミニバンの便利さを知っていて、馴染みやすさもあるから、軽自動車やコンパクトカーにも背の高いボディとスライドドアを求めるというわけだ。
ちなみに軽自動車のN-BOXやタントと、コンパクトカーのルーミーで維持費を比べた場合、1台だけを所有するなら税金にあまり差が生じない。金額がもっとも異なるのは自動車税(軽自動車税)だが、軽自動車は年額1万800円、ルーミーのような排気量1.0リッター未満のエンジンを搭載する小型車は、年額2万5000円だ。
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