N-BOXとルーミーが売れる「好ましくない」事情 車の実力以上に大きい世の中の変化による影響

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ピークだった1990年代の中盤と比べれば、今でも下まわる状態が続いている。所得が増えない中で新車価格が上がっているとなれば、売れるクルマのクラスが変わってくるのも当然だ。

就学年齢の子どもを持つ世帯がファミリーカーを購入するとき、車両価格は「200万円」に想定することが多い。この目安は今も昔も変わらず、15年前に販売されていた203万7000円のノアXは、まさに合致していた。

2007年に発売された2代目「ノア」。写真はGグレード(写真:トヨタ自動車)

新車価格が上がった今、同じ200万円想定で新車を購入しようと思うと、候補に挙がるのはN-BOXカスタムL(178万9700円)、あるいはルーミーカスタムG(192万4000円)といった車種になる。

経済的に無理をしないで購入できるファミリーカーが、以前のミニバンから今は背の高いコンパクトカーや軽自動車に移っているのだ。そうなると、今後もN-BOXやルーミーのような車種が堅調に売れるだろう。

今こそキューブのような車を

ルーミーは、前述の通り短期間で開発されたから、動力性能、走行安定性、乗り心地、内装の質、ノイズなどに不満な部分が散見される。購入時にはライバル車のソリオ、軽自動車サイズのN-BOX、タント、スズキ「スペーシア」なども試乗してみるといい。

2022年のマイナーチェンジで大幅にデザインを変えた「タントカスタム」(写真:ダイハツ工業)

軽自動車でパワー不足を感じたときは、ターボエンジン車に試乗してみてほしい。N-BOXカスタムLターボ(198万8800円)は、ターボのつかない自然吸気エンジンに比べて最大トルクは1.6倍に増えてパワフルに走るが、WLTCモード燃費は5%しか悪化しない。

ターボの価格はノーマルエンジンのカスタムLよりも19万9100円高いが、右側スライドドアの電動機能、パドルシフト、上級シート表皮などが加わり、アルミホイールのサイズも14インチから15インチに拡大される。

プラスされる装備の価格換算額を差し引くと、ターボエンジンの正味価格は約8万円だ。軽自動車のターボは走りの不満を割安に解消して燃費の悪化も抑えるから、積極的に検討するといいだろう。

なお、今は背の高い2列シート車が、軽自動車に偏っている。かつての日産「キューブ」のような、背の高いコンパクトカーの充実が必要なのではないだろうか。国内販売を回復できるのも、ユーザーニーズの高いルーミーのようなコンパクトなクルマであると考えられる。

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渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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