N-BOXとルーミーが売れる「好ましくない」事情 車の実力以上に大きい世の中の変化による影響

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本題はここからだ。現行N-BOXの発売は2017年、ルーミーは2016年だから、設計の新しさで売れたわけではない。この2車種とも、発売当初から販売台数が多く(ルーミーは2020年まで姉妹車の「タンク」と合わせて人気を得ていた)、今でも国内販売の1位と2位を保っているのである。

N-BOXとルーミーが息の長い人気車になった理由は何だろうか。N-BOXについてホンダの販売店に尋ねると、以下のように返答された。

「N-BOXは先代型の人気も高く、定番車種になっている。現行N-BOXの売れ方を見ると、先代型からの乗り替えに加えて、『フィット』や『フリード』、他メーカーのコンパクトカーからダウンサイジングするお客様も多い」

ホンダ「N-BOX」(写真:本田技研工業)

2022年1~11月に販売されたホンダ車でN-BOXの占める割合は、36%に達する。日本で販売されるホンダ車の実に“3台に1台以上”がN-BOXなのだ。ここまで売れるとなれば、先代型からの乗り替えに加えて、フィット、フリード、他社のコンパクトカーや軽自動車など、さまざまな乗り替え需要を吸収する。

しかも、N-BOXは先代型が好調に売れたから、現行型は販売台数をさらに伸ばすべく、高いコストを費やして開発されている。エンジン音は静かになり、ボディ剛性を高めたことで乗り心地もよくなった。インパネなど内装の造りも上質で、シートの快適性も高まっている。

もちろん、先代型と同じく背の高いボディによって、車内はコンパクトカーのフィットよりも広い。売れ筋グレードのスライドドアには、電動開閉機能も備わるから、子どもを抱えて乗り降りするときなどにも便利だ。これらの魅力がN-BOXの売れ行きを押し上げて、国内販売の1位を堅持している。

N-BOXよりひと回り大きいルーミー

国内販売2位のルーミーも、N-BOXと同じように全高が1700mmを超えるボディにスライドドア持つハイトワゴンだ。ルーミーは小型車だから、ボディは軽自動車のN-BOXよりも大きいが、デザインと機能はよく似ている。

トヨタ「ルーミー」(写真:トヨタ自動車)

ルーミーがN-BOXの拡大版に見える理由は、軽自動車の好調な販売を食い止めるために開発されたからだ。

2014年は「ハスラー」のヒットなどによってスズキが売れ行きを伸ばし、ダイハツとの販売合戦が激化した。この影響で2014年には、新車販売台数に占める軽自動車の比率が40%を超えた。2022年の39%を上まわる。

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