2000連休で自分に向き合い続けた男が悟った真実 「本当の自分」という幻想、自己啓発から哲学へ

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連休
膨大な連休を過ごした男が気づいた「自分が変わった」こととは?(写真:ELUTAS/PIXTA)
お正月休みもあっという間に終わり、重い腰を上げ、何とか会社や学校へむかっているという方も多いのではないでしょうか。
会社員であれば年末年始の10日程度、学生ならば冬休みの15日程度が「連休」の相場。ところが、『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』の著者・上田啓太氏は、結果的に6年間、驚異の2000連休以上を過ごしました。
あまりに長い連休の間に、人間の感情や身体はどのように変化していくのか。同書より一部抜粋、再構成してお届けします。
連休生活が1000日を超え、果たして「自分は変わったか」と考える著者。そもそも自分とは、自分が変わるとは何か……。
長い連休生活で薄らいでいく「自分」という概念の実相に迫るドキュメント。

自分が変わるとはどういうことか

この1000日間で自分は変わったか?

変わった気はするが、そうした問題を気にしなくなったと表現したほうが近い。変わらなくては、という切迫感が薄れた。自分というものに圧迫される感覚が減った。

自分を変えようという発想そのものに間違いがあったように思う。変わりたいと思うほどに変われない。こんな自分はもう嫌だと強く思うほど、きのうと同じ自分が維持されてしまう。そんなジレンマがあったのだが、じつは、これは当然のことで、自分を変えたいと言うとき、その人間はひたすらに自分のことを考え続けている。

自分はこんな人間だ。自分はこんな性格だ。自分にはこんな過去がある。そうして自分を踏み固めるように確定させた上で、そんな自分を変えたいと最後に考えている。

それは、自分に強烈に感情移入しながら同時に自分を殺そうとするようなもので、そもそも矛盾した発想だったんじゃないか。

自分を変えようとすることは、古い自分を殺そうとすることで、基本的には、血なまぐさい発想なのだと思う。人はハエや蚊を平気で殺す。見なければ見ないほどに殺せる。意識しないほど殺すことは容易になる。しかし自分を変えたいと言うとき、自分を見つめながら自分を殺そうとしており、当然、殺すことは難しくなる。

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