ひろゆきの「4chan」、日本人が知らない危険性 アメリカでは銃乱射と憎悪犯罪の温床に
その理由の1つは、西村が英語でも日本語でも、4ちゃんにおける自身の役割についてほとんど口を開かないことにある。
それでも、それ以外のほぼあらゆることについてズケズケと物を言う西村の発言からは、その内面が垣間見える。ネット上で最も有害な意見を交換する場所として台頭し、女性蔑視や白人至上主義、ニヒルな憎悪であふれかえるこの掲示板を西村はどのような動機や哲学で運営しているのだろうか。
西村はインタビューで、自身の倫理観の欠如と社会の制約に挑戦する姿勢を自慢することが多い。社会から非難されることに対する強い恐怖心がしばしば支配の道具として使われる日本においては、恥をほとんど何とも思わない彼の能力はある種の最終兵器であり、それが彼の成功を支える一大要因となっている。
モラルにとらわれることなく自身の現在の選択と未来について考え、行動に移している――。2007年に日本の雑誌『SPA!』のインタビューで西村はそう述べている。普通の人たちにはモラルがあるので、僕のような考え方はおかしいと言われるかもしれない、とも語っている。
トランプ暴動事件でも調査対象に
西村はそうした態度で、4ちゃんとその前身である日本の「2ちゃんねる」を運営してきたように思われる。裁判記録、インタビュー、20冊を超える著作、雑誌コラムなどで述べられているように、46歳の西村は2ちゃんねるのテンプレートを4ちゃんにも適用しているように見える。そのテンプレートとは、サイトをできる限り管理せず、いかなる変更要求も拒絶する、というものだ。
2001年、この問題を追及された西村は、サイトのコンテンツに「責任を感じていない」と答え、サイトを活発に利用しているユーザーが自分たちでルールを作るべきだと付け加えた。
2015年に4ちゃんを買収した際、西村は珍しくサイトのビジョンに関する質問に答えている。
当時、4ちゃんはすでにネット上で最も悪名高い場所の1つだった。もし1つでも変更できることがあるとすれば、それはどんなものになるかと問われた西村はユーザーに向けてこう語った。もっと面白いことが起こるようにするための変更になるだろう、「たとえ、それが悪いことであったとしても」――。
西村の願いは現実になった。彼がサイトを引き継いで以降、4ちゃんのユーザーたちはQアノン運動を生み出し、新型コロナウイルスワクチンや2020年の大統領選挙に関する陰謀論を拡散。2022年5月にニューヨーク州バッファローで大量虐殺事件を起こした白人至上主義者など、銃乱射犯の過激化にも一役買っている。