関ヶ原の戦いの「名場面」が存在しなかった事情 2023年のNHK大河ドラマは「どうする家康」

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関ヶ原古戦場決戦地(写真:ましゃいこ/PIXTA)
大人がかつて学んだ歴史は、最新研究と共にどんどん変わっています。無類の歴史好きで、歴史解説本を出版している吉本芸人・房野史典氏と、歴史研究家の河合敦氏による共著『超現代語訳×最新歴史研究で学びなおす 面白すぎる!日本史の授業』では、歴史上の有名な人物や事件の内容をおさらいしながら、最新の歴研究をかみ砕いて、歴史を洗いなおしています。
2023年のNHK大河ドラマは、江戸幕府初代将軍・徳川家康の生涯を描く「どうする家康」。徳川家康といえば「関ヶ原の戦い」に勝利し、江戸幕府を築きました。この「関ヶ原の戦い」も最新の研究でアップデートされています。『ほぼフィクション?「関ヶ原の戦い」ざっくり解説』に続いて、今回は房野氏と河合氏が「関ヶ原の戦い」を解説します。

秀秋は「開戦したと同時に裏切った」?

房野:関ヶ原の戦いのことを知ろうとなると、合戦当日のことも詳細に記された「軍記物」と呼ばれる史料に頼るのが一番。ところが、軍記物は〝軍記物語〞ともいうだけあって、文芸なんです。バトルシーンが魅力の一つである小説のようなものなんですね。つまり、僕らは〝フィクションをベースにしたフィクション〞を目にしてきたということになるんです。

ならば、信頼性の高い史料では「関ヶ原の戦い」はどう扱われているんでしょう。〝一次史料〞――その時代の当事者が出した手紙、日記、公文書――には、一体「関ヶ原の戦い」はどう書かれていたのか。

石川康通と彦坂元正という人たち(徳川関係者)が関ヶ原の戦いの2日後に連署で出した書状には、要約するとこんなことが書かれていました。

・9月14日に赤坂(岐阜県)に到着した家康が、15日の〝午前10時頃〞に関ヶ原に出陣して合戦が始まった。

・石田三成、島津義弘、小西行長、宇喜多秀家の4人は、9月14日の午後8時頃に大垣城の外曲輪(「曲輪」=城の中に造られた区画)を焼き払って関ヶ原に向かった。

・井伊直政、福島正則、尾張衆が先手(先陣)となり、東軍の諸将がこれに続き開戦したとき、小早川秀秋、脇坂安治、小川祐忠父子が(西軍を)裏切ったために、敵は敗軍となった。

・追撃戦で大谷吉継、島左近、島津豊久、戸田勝成、平塚為広らが討ち取られた。

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