【後編】大河の主役「徳川家康」先祖の波瀾万丈 家康の祖父「松平清康」までの一族の歴史を辿る

拡大
縮小

『三河物語』が信忠をボロクソに書いていることについて「次代の清康を讃えるため、その父信忠の無能をあえて強調している」との考察もあるが、著者の大久保忠教としても、信忠の悪口を書きたくて書いたわけではないだろう。

信忠に関する悪評が代々伝わっていたから、それを記したに過ぎないのではないか(その悪評が正当で真実か否かは別であるが)。「無能の当主もいた」と書くよりも「歴代当主、全て名君だった」と大久保も本当は書きたかったのだろう。

家康の祖父が当主の座に

『三河物語』には、松平家は「武辺」(武勇)・「念頃」(ねんごろ=心がこもっていること。家臣への思いやりある言葉かけなど)・「慈悲」の想いが当主に備わっていたからこそ、存続できた家だとある。だが、信忠にはそのどれもがないと記すのである。

少し可哀想なくらいの酷評だ。それはさておき、信忠が引退したことにより、松平清康が当主の座につく。彼こそ家康の祖父にあたる。家康の誕生が近づいてきている。

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT