茂木健一郎が語る「周りに流されない人」の頭の中 SNSに情報が溢れる中、どう正しい判断をするか
官僚であれば誰もが憧れる「事務次官」というポスト。その後任者を決めなくてはならない状況です。現職の事務次官は、次の事務次官のポストを狙う官僚たちに、「私の後任者は、“正しい質問”ができる人でなければいけない」と告げます。
そして、候補者たちと会話をし、そのうちの1人に「君が次の事務次官だ」というようなことを言うんですね。つまり、合格者が1人だけいたと。どうやって選んだと思いますか?
正しい質問ができた官僚は事務次官に対し、「事務次官、話はまったく変わりますが」と切り出しました。続けて、「退職されたあとはどんな仕事に就きたいですか?」と尋ねます。
すると事務次官は、「そうだな、たとえばあの企業の社外取締役なんかいいかもね」「ロイヤルオペラの理事長も魅力的だな」「イギリスとカリブ海の諸国の友好団体の会長とかもいいよね」などと答えます。それを官僚はすかさずメモを取ります。
そして官僚は「わかりました。なるほど。後任者が誰であれ、あなたが事務次官を辞めたあと、後任者は、あなたがそのような仕事に就けるようにきっと取り計らうのではないでしょうか」と言うんですね。それで事務次官が「そうか? 話は元に戻るけど、やっぱり私の後任は君がいいんじゃないかなあ」と答えるのです。
日本人は自己アピールをしがち
これ、日本人が同じようなことをやると、どうなるでしょう。「事務次官、私はこんなことができて、あんなことができて」と、自分の才能をアピールする人が多いのではないでしょうか。就活でも、「自己アピール力」が重視されていますよね。
しかし、「こんなことができる」人はあなただけではありません。というより、同じ仕事を同じ年数くらいしているとすれば、あなたができる仕事はほかの誰かさんでもできると考えたほうがいい。
「君が後任だ」とお墨つきをもらった官僚は、「自分ができること」は話しませんでした。逆に「あなた(事務次官)がしたいこと」を聞きました。定年まで勤め上げた事務次官は、もうハードな仕事はしたくないけど、ポストやお金はほしいんですよね。定年するからこそ、この先の自分が見えなくて不安な面もあります。官僚は、そのあたりの機微を汲み取って「退職後にどんな仕事に就かれたいですか?」と聞いたのです。
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