文法的や意味的に正しいとか正しくないとかを超えて、時として言葉は、個人の感覚によってニュアンスが変わってしまうものです。「了解いたしました」は、失礼な表現ではありません。でも、もしも上司や取引先の人、つまり、敬語を使わなければならない「外側の人」が「了解いたしました」を失礼だと感じる感覚を持っていることがわかったら、相手の感覚に寄り添い、言い方を変えてあげることが、相手に対しての敬意を表する行動といえるかもしれません。
では、肝心の言い換えです。「了解いたしました」と使いたいとき、つまり「わかりました」を丁寧な表現で使いたいときにはどうしたらいいでしょうか。その解答の第1候補はこれです。
「かしこまりました」
これで十分です。これなら、「わかりました」を丁寧に表現しているし、敬語として誤りではないし、多くのかたが失礼だとは感じない言い方です。
「承知いたしました」ではダメ?
「承知いたしました」ではダメですか? と訊かれることがあります。もちろん「承知いたしました」でもOKです。
ただ、ちょっと気になる点があります。「承知いたしました」は「了解いたしました」と同じ構造です。「承知」も、大雑把に言えば「わかる」の漢語表現で、この言葉自体に敬意のニュアンスはありません。「いたしました」をつけることによって敬語表現として成立しています。
ですから「了解いたしました」をNGとする人が「承知いたしました」をOKとするかどうか、ちょっと微妙です。もし「了解いたしました」がNGで「承知いたしました」はOKとしている人がいるとしたら、その人の言葉の選択には根拠がなく、あくまで個人の感覚で判断しているのだな、ということがわかります。でも現実には、そういう人も案外多いものです。
そんな人に対しても「かしこまりました」ならおそらく大丈夫でしょう。「かしこまりました」はさまざまな言い方をカバーすることができます。
・わかりました
・OKです
・いいですよ
・内容を理解しました
・納得しました
などなど、さまざまな意味合いを「かしこまりました」というひと言で表現することができますし、「その言い方は失礼だ」と非難されることもありません。しかも幅広いニュアンスをカバーしているにも関わらず、意図を誤解されることもほとんどありません。安心して使える敬語です。
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