アルゼンチンの優勝で幕を下ろしたFIFAワールドカップカタール2022。クロアチアに惜敗したものの、強豪ドイツ・スペインに勝ってグループリーグ1位で決勝トーナメントに進んだこともあって、FIFA(国際サッカー連盟)が発表した、本選出場32カ国の最終順位で日本は9位となりました。
ライブストリーミング形式インターネットTVプラットフォームのABEMAでもその快進撃が伝えられました。ABEMAでは元日本代表の本田圭佑さんが日本戦4試合で解説を務めましたが、ワールドカップ出場経験者らしい的確な指摘や、説明のわかりやすさ、その一方で心の底からサッカーが好きなことが伝わるような熱さも見え隠れして、好評だったようです。
W杯解説・本田圭佑さんの「さん」付けが話題に
本田さんが、解説の際に現役選手のことを「さん」づけで呼んでいたことも話題になりました。「三笘さん」「鎌田さん」「堂安さん」といった具合に、本田さんよりもひとまわり近く年下の選手を呼び捨てにすることなく、終始丁寧な言葉づかいで解説を続けていました。
しかし出場しているすべての選手に対して「さん」づけだったわけではありません。長友佑都選手のことは「ユウト」、吉田麻也選手のことは「マヤ」、酒井宏樹選手のことは「ヒロキ」と、名前、というか、呼び慣れたニックネームで呼んでいました。同世代の選手ばかりでなく、久保建英選手のことも「タケ」と呼んでいましたね。年令に関係なく、親交のある選手に対しては「さん」づけでなく愛称で呼ぶ。本田さんと各選手の距離感が伺い知れるようで、サッカーの内容とは別にとても興味深いものがありました。
年齢が上ならば、下の選手に「さん」づけなどせずに呼び捨てにすればいい、そう感じた人もきっといたはずです。その一方で、年令に関係なく「さん」づけで呼んでいた本田さんの敬意の表現に、好感を持った人も少なくないでしょう。
「敬語は上下関係を示すための表現」と思っている人は多いかと思います。でも、その常識が本当に適切なものかは議論の余地があります。
確かに、歴史的に見ても奈良時代には既に、身分による上下関係を表すための尊敬語や謙譲語を使っていたことが文献に残されています。主従関係を明確にできる敬語は、戦前までは重宝されていました。しかし、今はその当時のような明確な上下関係を強く意識させる必要はありません。身分に上下なく、誰もが平等に認められることが基本です。
そんな時代にふさわしい敬語の考え方は、「上下関係」ではなく「自分と相手との距離感に応じて考える」ことです。まさに、本田さんが解説で「さん」をつける選手とつけない選手を自然に分けていたのと同じように。
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