とはいえ、現状のハイブリッドワークをやめようとはならないでしょう。今後は、コスト削減という観点だけでなく、地球環境への配慮という観点からも、オフィスの床面積を適正化していくことがよいというメッセージを打ち出していきたいと考えています。
もう1つは、働く人の感覚の変化です。長年意識調査を続けてきましたが、コロナ以前は、「オフィスに自分専用の席がないと嫌だ」という人が7割でした。
ところが、コロナ禍でその割合が半数を切り、「フリーアドレスでいい」と考える人が増えたのです。実際、固定席を前提としないオフィスがトレンドになってきています。
感染症対策で、在宅勤務が増えたり、席の間隔を空けなければならなくなったことがきっかけで、固定席がなくても働けるじゃないかと気づいたわけですね。
川口:デザインにおいても、キーワードは「選択肢」です。かつての固定席型では、働く人の居場所は、自席、会議室、社員食堂ぐらいしかありませんでした。
しかし、フリーアドレスやABW(Activity Based Working:時間や場所に制約されない働き方)というキーワードが広まり、その時々で、その人がいちばん心地よい場所、その活動にいちばん合う場所を選べる働き方も増えてきました。
さらに、オフィスに出勤するか自宅で働くかも選択肢となり、今までは物理的に難しかったのですが、社外の人とチームを組むことも増えましたね。
「席は自由です!」と言われても困る現実
――フリーアドレスのメリット、デメリットを教えてください。
池田:フリーアドレスを導入しても、領土化・領域化が起きる可能性があります。フリーのなかでも、あの部署の人はだいたいあの辺りに座っている、というものですね。
オフィスを運用する側からすれば、毎日同じ席に座らず、ばらけてほしいと思うのですが、現実には、ある程度集まっていたほうが仕事しやすかったり、相談を受ける立場の管理職は、決まった場所にいるほうが安心感が生まれたりもします。