66歳の石毛宏典氏が失敗を包み隠さず明かすワケ 野球振興だけでなく「スポーツの夢」を追い続ける

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――しかし四国アイランドリーグは開幕早々、資金ショートの危機に見舞われることになった。開幕すれば入金されるはずのスポンサー料が入金されなかったのだ。

当てにしていたスポンサーの契約を担当営業がうまくまとめ切ることができなくて、数千万円のマイナスが生じてしまったんですね。この誤算が大きかった。口約束ではなくてちゃんと契約をしたはずだったんですが、その日に銀行にお金を入れますよ、と言うことではなかったんですね。開けてみると全然お金が入ってない。

私の理念に共感して動いてくれた人が、そういうことに精通していなかったんですね。その辺は猛反省です。実働部隊がそんなにいなかった。結局、私がオリックスから持ってきた報酬は、赤字の補填のためにあっという間になくなった。そして新たな経営陣が参画して、これまでの経営陣は一新された。役員構成がかわると私の意見が通らなくなった。そして社長退任へとつながっていくんですね。

失敗を包み隠さず明かした石毛氏

――石毛氏は2つ目の独立リーグであるベースボールチャレンジングリーグ(BCリーグ)さらに、関西独立リーグ(初代)の設立にあたっても、顧問として参画した。2009年11月には『石毛宏典の「独立リーグ」奮闘記』(アトラス出版)という本を著し、独立リーグ創設の奮闘を語っている。こうした書籍は手柄話になることが多いが、石毛氏は失敗談も率直に語っている。石毛氏の失敗は、その後、多くの独立リーグ、球団創設者がたどった道であり、「夢」を追うこと、地方にスポーツビジネスを根付かせることの難しさを痛感させる。それを包み隠さず書くことで、後進に大きな教訓を与えた。そういう意味では、石毛氏は「日本独立リーグのファウンダー」だったのではないか。

2015年に当時の安倍晋三総理が「地方創生プロジェクト」の中で「16球団構想」を打ち出した。私はいい話だなと思った。政令指定都市に16球団を置いて、50万都市に二軍を16置いて、三軍を30万都市に32置いて、15万都市に四軍を32置くと、日本国内に96のプロ球団ができる。野球だけじゃなくサッカー、バスケットと3つのプロスポーツがマイナー組織を各都市に置き、これを統合して総合型地域スポーツクラブにすることで、地方にスポーツ、若者の流れができて経済の流れもできる。地方創生はここからできるんじゃないかと思った。

今、私はプロ野球OBクラブという歴史のある組織の常務理事として、野球界の発展に取り組んでいます。よく、野球少年をいかに増やしていくか、と言われますが「ちょっと待ってくれ、俺たちはプロ野球OBだけど、これから野球振興だけのいいのか」と言っています。そうじゃなくて、スポーツ全体の振興をタッグを組んで大きな塊で推進しなければだめなんじゃないかと思っています。

66歳になりましたが、私はこれからも「スポーツの夢」を追い続けるつもりです。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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