66歳の石毛宏典氏が失敗を包み隠さず明かすワケ 野球振興だけでなく「スポーツの夢」を追い続ける

✎ 1〜 ✎ 143 ✎ 144 ✎ 145 ✎ 最新
拡大
縮小
石毛宏典氏(写真:筆者撮影)

1996年限りで現役を引退した石毛宏典氏、福岡ダイエーホークスは、いずれ指導者に、という構想を持っていたので、幹部候補生として遇するつもりだった。しかし石毛氏の考えは違った。「『黄金時代の西武』まとめた石毛宏典氏の驚く半生」に続いて、石毛氏の半生について聞いた。

ロサンゼルス・ドジャースに派遣された石毛氏

現役時代から「アメリカのベースボールを知らずに日本の野球は語れないな」と思っていたので、まずはアメリカに行こうと思った。それも1カ月、2カ月じゃなしにずっと1年くらい向こうに行って、アメリカのベースボールを見たいと思ったんですよ。

そこでパンチョ伊東さん(伊藤一雄:MLB解説者)とともに「アメリカ珍道中」をしようと考えていたんですが、それを根本さんに言うと、それはまかりならん、ホークスと契約して行けと言われた。パンチョさんは同行できなくなって、私1人で「コーチ留学」という形でアメリカに行くことになった。

――ロサンゼルス・ドジャースに派遣された石毛氏は、アメリカ野球のさまざまなシーンをつぶさに見ることになる。

ドジャースの春季キャンプ地であるベロビーチでスプリングトレーニングに参加し、3月下旬にペナントレースが開幕すると2カ月間メジャーに帯同して、それからAAA、AA、Aとマイナーリーグを見て、マイナーリーグが8月に終わるとメジャーに帰ってきて終盤からポストシーズンを見て、11月になるとドミニカ共和国のウィンターリーグも見た。メジャーのユニフォームも着て、練習も一緒にやった。マイナーでも練習で指導をし、ゲームではベンチにも入った。

私は「メジャーのコーチはすばらしい指導をしていると聞いてきた、それを見せてください」と言ったのですが、コーチは「イシゲ、それは何年前の話だ。今はメジャーリーガーの給料も高くなっている。無理に練習をさせて故障でもさせたら訴訟問題など、大変なことになる。われわれはベビーシッターみたいなもんだ」と言われた。選手のご機嫌取りだというんですね。今の日本もそれに近い状態になっているかもしれないけど「指導」という点では、がっかりしました。広岡さんのような指導者はいなかったんですね。

――石毛氏は日米の指導者像の違いにショックを受け、しだいに両者を冷静に見つめるようになる。

次ページ「ふざんな、もう帰っていい」と言われたが…
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT