66歳の石毛宏典氏が失敗を包み隠さず明かすワケ 野球振興だけでなく「スポーツの夢」を追い続ける

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アメリカには当然、各国のいい選手がメジャー目指して集まってくる。身体能力はすばらしいけど我流ばかりで上にあがれない選手もたくさんいる。ここをこう直せばいいのに、というのは日本人の発想です。日本という国は資源も何もないから原料を輸入して加工していいものを作ってきた。技術力が大事だと思ってきた。多分野球も一緒なんですね。

そこで私はドジャースのピーター・オマリー会長に「エキスパンション(球団拡張)でチームが増えて、本当はマイナーにいるような選手もメジャーに来て質の低下を招いています。レベルを上げるためには日本的な指導ができるコーチを雇う時期に来ています。日本人の指導能力は高いので、すばらしいポテンシャルをもった若者を一つの商品に作り上げるには、日本のコーチが必要な時代が来ます」と言ったんです。

オマリーさんは怒って「ふざんな、もう帰っていい」みたいに言いました。でも1週間ほど経って「この間のお前の話も一理ある」と言われた。私がマイナーリーグにいるときにある選手を指導したら数字が上がったんですよ。オマリーさんはこれを知ったみたいで、コーチで残らないか、と言われた。

ものすごくうれしかったんだけど、家族も連れてきているし、球団から派遣されている、来季はダイエーの二軍監督になる契約もあるし、「残念だけど帰ります」と言った。私はアメリカで地に足をつけて同じ空気を吸って生活をすれば、どんな国民性や慣習文化のもとにベースボールが生まれたのかがわかると思った。それを肌で感じたかったんですね。

福岡ダイエーホークスの二軍監督に就任

――石毛氏は、いったいいくつの「魅力的なオファー」を断っているのだろうとため息が出る。子供のころから「他人の評価」ではなく「自己評価」が判断の基準であり、自らの信じるところに従って歩んできたのだ。帰国後、石毛氏は福岡ダイエーホークスの二軍監督に就任する。

2軍監督になって、私はピッチングコーチ、バッテリーコーチ、打撃コーチ、守備走塁コーチという肩書を撤廃したんですよ。それによって、1人のピッチャーを見るときにピッチングコーチだけでなくいろんな側面からコーチが指導できるようにした。若手選手をみんなでうちの商品になり得るような人材に育てていくのがわれわれの仕事だからと。当時は二軍の選手数は少なくて、捕手が二塁を守ったりすることもありました。何のための二軍だという気もあって、いろいろ改めたわけですよ。

また、当時は夏でも半ズボンで練習することはなかった。今でこそ短パンTシャツになっていますが、当時はきちんとユニフォームを着ていた。でも当時の雁ノ巣(福岡市)の二軍球場は暑いんですよ、選手に「短パンTシャツで練習していいから」と言ったんだけど、これもあとでダメと言われた。私の考えはいつもちょっと早すぎたのかもしれません。

最後は、私がオフにチームの強化策について提言したことが「批判だ」ということになった。ちょうどフェニックスリーグ(秋季の教育リーグ)の前に家族を連れて熊本の阿蘇プリンスホテルに行こうとしたら、根本陸夫さんからすぐ帰ってこいと言われて、解任されました。

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