「表情」の魅力度を変えてしまうアルコールの魔力 飲酒にまつわるトラブルと「表情」の意外な関係
3つ目は、非対称性検出精度低下仮説というものです。私たちは、左右対称の顔を美しく思います。しかし、私たちの顔は、整形手術などをして修正しない限り、微妙に左右非対称になっています。アルコールを飲むことで、平衡感覚がズレ、非対称の顔が対称に、つまりは美しく見える、ということです。
ちなみに、このビアゴーグル効果と同じ現象がタバコを吸っているときにも生じることがわかっています。こちらはニコチンゴーグル効果といいます。
さて、アルコールに話を戻しますと、アルコールを飲んでいる人自身の顔も変化します。それではアルコールを飲む人の顔は魅力的になるのでしょうか。それともならないのでしょうか。
この関係について、Vanら(2015)が研究しています。実験参加者の学生を集め、アルコールを飲んでいない条件、1キロ当たり0.4グラムのアルコールを飲んでいる条件(アルコール度数14%のワイン250mlに相当)、1キロ当たり0.8グラムのアルコールを飲んでいる条件(アルコール度数14%のワイン500mlに相当)における顔写真を撮影します。
それぞれ、アルコールなし条件、低アルコール条件、高アルコール条件と呼びます。合計104枚、50枚の女性の顔写真が集められました。これら顔写真の魅力度を異性の実験参加者に評価してもらいます。
アルコールを飲む人の顔の魅力
実験の結果、アルコールを飲んでいない条件に比べ、低いアルコール条件の顔の方が、魅力的に評価されるという傾向がわかりました。しかし、同様の傾向は、高いアルコール条件の顔のときには見られないことがわかりました。
1つ目の理由としては、アルコール摂取に伴い、血管が拡張され、顔が紅潮することで、顔の魅力度が向上した可能性が考えられています。しかし、低いアルコール条件に比べ、高いアルコール条件の顔の魅力度は高く評価されなかったため、この解釈は、適度なアルコール摂取量のときのみに当てはまるのかもしれません。
2つ目の理由としては、低いアルコール状態のとき、ポジティブな気分が向上し、わずかに笑顔になったり、筋肉がリラックスしたりすることで、魅力度が向上した可能性が考えられています。
このように、飲酒は、他人の表情の魅力度を判断する能力、そして飲んだ人自身の表情の魅力度をそれぞれ変える魔力があります。こうした点を頭の片隅に置きつつ、楽しく、失敗のない素敵な年末年始をお過ごしください。
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