「外交」というと何やら難しい話に聞こえますが、簡単に言ってしまえば、各国が、自国の「強み」をアピールし、「逆らったら、損するぞ(=強制)」「仲間になれば、よいことあるぞ(=報酬)」と言い合いながら、少しでも自国に有利な状況をつくりだそうとしているわけです。
では、国際社会で一目置かれる日本の「強み」は何でしょうか。日本は、今でも世界第3位の経済大国ですので、それなりの「強み」はあります。ただ、かつて世界の国々を惹きつけた経済成長力や技術力は失われ、少子高齢化・人口減少、長期にわたる経済停滞によって、国としての魅力や強みは大きく低下しています。
このようなことを言うと、「日本には、素晴らしい観光資源や、おもてなしの心があり、礼儀正しい日本人や質の高いアニメ・ゲームは世界でも評価されているではないか」との声が出てきます。いずれも国民として誇るべきものですが、国際社会で「外交の力となるような強み」ではありません。
ある国と日本の関係が悪化し、日本がその国の観光客を締め出しても、旅行したい人は違う国に行けばいいだけで、その国自体も困りません。
「国の力関係」が顔をのぞかせる瞬間
コロナ下の中国では、日本企業の駐在員や家族のビザがなかなか発給されないときでも、アメリカ企業やドイツ企業は簡単にビザを取得できていました。中国政府としては「強いアメリカとは事を荒立てたくないし、ドイツの技術力は欲しいけど、日本は……」ということなのでしょう。こうしたちょっとしたところにも「国の力関係」が見え隠れします。
日本では、今、「防衛力強化」の動きが加速しています。これは、国際社会で発揮できる「強み」が失われ、存在感が低下してきているという「焦り」とも無縁ではありません。考えなければならないのは、こうした防衛力強化が、本当に、中国や北朝鮮の行動抑止に効果があるのか、国際社会における日本の発言力や影響力の向上につながるのかどうかです。
日本との過去の歴史を決して忘れていない東南アジア諸国との関係にどのような影響がでるのかも考えるべきです。いつまでもアメリカに頼っているわけにいかないから、という議論もあるようですが、それであれば、戦後の日本の国家戦略の大転換ですので、小手先の話ではなく、もっと、国民を巻き込んだ抜本的な議論が不可欠です。
よく考えれば、仮想敵国に対する抑止効果も見えにくく、コストもかかる「防衛力強化」に頼らずとも、日本が国際社会で一目置かれ、外交力を高める手段はあります。ひとつは「科学力・技術力」です。経済安全保障上のカギである「強固なバリューチェーンの構築」においても、これらは不可欠な要素です。
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