残念ながら、現在は、かつての優位性は失われ、アメリカはおろか中国にも後れを取るようになってしまいました。
しかし、五輪や万博のような「イベント」頼みの経済政策から脱却し、地道に「科学力・技術力」を向上させることを国家戦略の基軸に定め、かつての「技術の日本」の復活を真剣に目指すべきと思います。その潜在力・可能性はまだかろうじて残っていると思います。
もうひとつは「ソフトパワー」です。ソフトパワーとは、ハーバード大学ケネディスクールのジョセフ・ナイ教授が唱えた概念で、軍事力や経済力(ハードパワー)ではなく、その国の文化や価値観などに対する共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得する力と定義されています。
30年以上前に提唱されたものですが、これこそ資源に乏しく軍事力に頼らない日本が、今でも積極的に検討すべき概念です。
日本でも過去、議論されてきましたが、結局「日本のソフトパワー」=「アニメやゲーム、観光資源、伝統芸能」の話しかでてきていません。いわゆる「クールジャパン」です。
ソフトパワーの根源は価値観だ
確かに、これらも重要な要素ですが、ソフトパワーの肝は、民主主義や人権、差別撤廃、気候変動などについて、どう考えるかといった「価値観」にあります。世界から共感され、尊重される価値観を持ち、それに向けて具体的にどう行動するか、国際社会でリーダーシップをどう発揮するかが問われているのです。
しかし、今の日本は、入管施設収容外国人に対する扱いなどについて国連機関から再三にわたる是正勧告を受け、外国人技能実習制度は、アメリカ国務省から「人身売買」と指摘されている状況です。
昨年の東京五輪では、政治家を含む関係者からの差別発言や人権軽視発言が相次ぎ、さらには汚職事件も表面化し、無様な姿を世界にさらけ出しています。これでは、いくら、日本の文化・芸能・観光をアピールしても、世界から一目置かれることはありません。
価値観と、その実現に向けた「国際社会でのリーダーシップ」を軸とした「真の日本のソフトパワー」のあり方を考え、これを世界に打ち出し、行動していくことを今一度模索していくべきです。
日本は先の大戦後、先人達が、資源もない中で生き残るために何が必要かを考え、行動し、技術力を武器に経済大国の地位にまで上り詰めました。台湾、北朝鮮などをめぐる国際情勢が緊迫化し、ますます「外交力」が求められる中、日本が世界から一目置かれる国になるためには何をすべきか、改めて英知を集めて考えるべきだと思います。
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