【繰り返す下痢】受診の時期と行くべき診療科は 根本原因「考え方のクセ」を直す心理療法が有効

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薬でいうと、下痢型に対して長年処方されてきた排便調整薬のメペンゾラート(トランコロン)が使えなくなる。製造元のアステラス製薬が2023年3月に同社から卸売会社への出荷を終了すると発表したためだ。今後は、代替品としてラモセトロン塩酸塩口腔内崩壊錠(イリボー)や、ポリカルボフィルカルシウム製剤(コロネル)、トランコロンの後発医薬品(ジェネリック医薬品)などを使っていくことになる。

「治療には比較的新しいイリボーやコロネルが使われることが多いですが、患者さんによっては、昔から使われているトランコロンが有効なこともあります。それぞれ作用が違うので、患者さんの症状に合わせて薬を選択していくことになります」(伊藤さん)

心療内科で診てもらう必要も

メンタル系のアプローチが必要になるケースは、内科の治療だけでは十分な対応ができず、症状が改善されにくい。その場合、心療内科での治療が必要になってくる。心療内科とは、ストレスなどのさまざまなメンタルへの負荷が、体の症状として現れる病気を専門に診る診療科で、過敏性腸症候群も対象となる病気の1つだ。

伊藤さんのような心療内科医は、内科医である一方、精神科的な治療にも精通している。「当科では薬の治療を続けながら、自律訓練法や森田療法などの心理療法を併用して治療を進めていきます」。

心療内科で行う代表的な心理療法が、自律訓練法だ。以下のような流れで行っていく。

【自律訓練法のやり方】
①座った姿勢、または仰向けの姿勢になる
②目を閉じてゆっくり呼吸を繰り返す
③「右手が重たい」→「両手が重たい」→「両手両足が重たい」→「両手両足がとても重たい」を心の中で繰り返す
④「気持ちが落ち着いている」を心で繰り返す
⑤「両手両足があたたかい」→「両手両足がとてもあたたかい」を心の中で繰り返す
⑥目を開けて手を握って開く、足首を動かす

これを1回につき5分~10分かけて行う。

実際の診療では、医師や心理士の指導のもとで行ったあと、自宅でも1日2回~3回繰り返す。次回の診察時に同じ動きができるかどうか復習を行う。

「人は過度な心理的ストレスを感じると、大脳新皮質から大脳辺縁系、そして視床下部への緊張信号が出されます。それにより、視床下部の機能障害がもたらされて、視床下部が支配する自律神経系のバランスが崩れ、下痢といった過敏性腸症候群の症状を引き起こします。自律訓練法を繰り返すことで、自律神経のバランスを整えていきます」(伊藤さん)

なお、自律訓練法は専門家から教えてもらったほうがよいそうだ。

「本などを読んで試す人もいますが、正しく習得できないこともあります。外来だと医師や心理士が患者の状況をいろいろ見ながら指導してくれるので、できればそのほうがよいでしょう」 と伊藤さんは話す。

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