「心にもないことを言えない人」の部下の褒め方 「自分は本当にできているのか」を振り返る

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無理やり褒めても嘘がばれてしまう(写真:takeuchi masato/PIXTA)
職場において、人間関係のトラブルを減らすためには、コミュニケーションの質を高める必要があります。本稿では、桐生稔氏の著書『話し方の正解 誰とでもうまくいく人の55のルール』より一部を再編集のうえ、①効果的な部下の褒め方、②相手を不快にさせない指摘・注意の仕方、③相手の話を遮らずにスムーズに会話を進めるためのルール、の3つについて解説します。

無理やり褒めずに「自覚」する

かつて「褒める」ことが苦手な上司だった私は、「褒め方」について本やセミナーで徹底的に学びました。しかし、職場の人やお客様を学んだ通りに褒めても、まったくと言っていいほどうまくいきませんでした。「思ってもいないことを言って嘘がバレる」、そんな感覚です。

もちろん「相手のいいところを見つけよう」と努力しました。褒め言葉の「さ・し・す・せ・そ」などというのも実践しました。「さ(さすがですね)」「し(知りませんでした)」「す(素晴らしいですね)」「せ(センスがありますね)」「そ(そうなんですね)」こういう類のものです。

でも、手八丁口八丁、ペラペラ口にしたからといって、相手が喜ぶとは限りません。むしろ、相手からは胡散臭いと思われました。そして気づきました。「無理やり褒めようとすること自体、間違っている」と。

それから、私が出した結論はこうです。

褒めない。

その代わり自覚するようにしたのです。

自覚とは、自ら覚めることです。つまり、「自分は本当にできているのか」を振り返る行為です。

例えば、毎朝、気持ちのいい挨拶をしてくれる人を見て、「私はこんなに気持ちのいい挨拶ができているだろうか?」と内省します。すると、できていない自分に気づきます。自覚すると、自然と口から「○○さんっていつも元気に挨拶してくれるよね。本当に凄いね」と言葉を発するようになります。

また以前、知人の女性経営者の方から「身だしなみは相手に対する思いやりですよ」と言われ、私は「なるほど。身だしなみについて、相手への思いやりとイコールで考えたことがなかったです。本当に素晴らしい配慮です」と思わず言葉を洩らしたことがあります。

別に褒め言葉の「さ・し・す・せ・そ」なんて意識しなくても、自然に言葉は出てきます。部下に声をかけたとき、「○○君、よく30分もプレゼンできたね。僕が君くらいのときは緊張しすぎて5分でプレンゼンが終了したこともあるよ」と言ったことがあります。

それを聞いた部下は、安心したのかボロボロと泣き始め、自らのいたらなさを語り出しました。私は褒めようとも、鼓舞しようとも思っていません。自らを省みただけです。

「自分はできていると過信していないか?」

「頭が高くなっていないか?」

まず、自ら覚めること。それが認識できている人は、他人の行為を見て「あの人はあんなことができている。本当に凄いな」と心からの声を漏らすはずです。そして、それは本当に思っていることなので相手にも伝わります。

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