「トヨタ車」にも入り込むウイグルの強制労働部品 ベンツ、テスラ…業界全体の汚染が調査で発覚

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中国のサプライチェーンは複雑かつ不透明で、新疆からアメリカに入ってきている製品を個別に追跡することは難しい。過去3年間にわたり、新疆を含む中国各地では、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるためロックダウンが断続的に繰り返されてきた。パンデミックとなる以前から中国政府は、とくに人権団体や報道機関の新疆へのアクセスを厳しく管理してきた。

原則論を語る自動車メーカー、完全無視のテスラ

こうした制約があるため、新疆の鉱山や工場でウイグル人労働者がさらされている強制労働の程度を判断することも困難だ。それでもアメリカ政府は、弾圧が全面的に行われている新疆の環境に鑑み、企業が強制労働によって製造されたものではないと証明できない限り、新疆を経由したいかなる製品も強制労働によって製造されたと見なすようになっている。

新疆の労働者に「ノーと言えるチャンスはない」。報告書の執筆者の1人でもある新疆出身のヤルクン・ウルヨル氏は、新疆産の製品は「土地、資源、人々を搾取した産物だ」と語る。

ニューヨーク・タイムズが接触した世界的な自動車メーカーは報告書に異議を唱えなかった一方で、人権侵害や強制労働に対して自社のサプライチェーンの管理を徹底していると述べた。

GM、フォルクスワーゲン、メルセデスは、サプライヤーの行動規範によって強制労働は禁止されていると述べた。ホンダは、サプライヤーにはグローバルな持続可能性ガイドラインの順守を求めていると話した。フォードは、中国を含むグローバル事業が、対象となるすべての法律と規制に準拠していることを確実にするプロセスを維持していると語った。

トヨタは声明で、「ビジネスパートナーとサプライヤーには、人権を尊重し、これを侵害しないという当社の指針に従うことを期待している」と述べた。

テスラは繰り返しのコメント要請に応じなかった。

中国政府は、新疆に人権侵害はないと主張し、新疆における強制労働に関する告発を「世紀のウソ」と呼んでいる。

在ワシントン中国大使館の劉鵬宇(リュウ・ペンギュウ)報道官は、「新疆での『強制労働』は、グローバルな産業サプライチェーンから中国を締め出すために、アメリカが意図的にでっち上げ、広めたウソだ」と声明で述べた。

(執筆:Ana Swanson記者)
(C)2022 The New York Times

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