NHKの会長人事より何倍も大事な「本当の課題」 来年4月から受信料未払者への「割増金」は2倍に

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そのうえ、2023年4月から受信料未払者に対する割増金をこれまでの2倍に上げるという。反感しか買わないそんな罰則をつけても、ドンキのチューナーレステレビの売り上げに貢献するだけで、かえって放送から離れてしまう最悪の策だ。今からでも取り下げたほうがいい。

NHKの役割がただの放送事業ならなくなってもいいのかもしれない。だが今、「インフォメーションヘルス」の議論が浮上している。ネットが中心になってきたら情報の健康、つまり正しい情報伝達を誰が担うのか、という問題だ。これに対応すべくNHKは公共放送ではなく公共メディアを目指すというのだが、その実態がよくわからない。

ネット中心の生活者に対しての「公共メディア」

よく「NHKはスマホを持っているだけで受信料を取るつもりだ」と言われるが、それは無理だろう。NHKの今後を議論する総務省の有識者会議「公共放送ワーキンググループ」でも、出席した有識者は全員がこの考え方を否定した。

ではどうすればNHKはネット世代にも正しい情報を届けられるのか、それに対応した新たな受信料の仕組みはどんなものか。スクランブル方式にすればいい、と言う人がいるがそれは「公共メディア」ではなく「有料メディア」になってしまい、商業メディアとなんら変わらなくなる。NHK以外のメディアがやればいいことだ。

ネット中心の生活者に対しての「公共メディア」とは何か? それに対応するお金の取り方は? スクランブル方式にはしないのか? 何よりテレビから離れたネット世代にどう価値を認めてもらうのか? この難しいパズルに、稲葉氏は任期中に否応なく直面することになる。突然指名されたらしいが、その準備はあるのだろうか?

そしてNHK内部のみなさんにも問いたい。このパズルを解くのは稲葉氏ではなく、NHKで働くあなたたちだ。今後のNHKについて、内側からも声を発するべき時ではないだろうか。会長や理事、ましてや経営委員が答えを出せるはずがない。NHKでは組織の進路を上の人たちが政治家や総務省の顔色を見ながら決めてきた。もうそんな段階ではないと思う。これまでのように右往左往して進まない議論を横目で見ているだけではこのパズルは解けない。内部で考え内部で答えを出す努力をすべきだ。

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